亡くなった人から財産を相続した場合、一定額を超えると相続税がかかりますが、このとき、適用できる特例を使うなどの選択をすることで、相続税を低く抑えることができます。今回は、相続税の節税につながる4つの対策と知識について、相続・贈与についての本を多く監修している相続実務士の曽根恵子さんに話を聞きました。
※ この記事は『【図解】相続&贈与のすべてわかる本 令和8年度改正対応版』(扶桑社刊)より一部抜粋、再構成の上作成しております。
すべての画像を見る(全4枚)対策1:「宅地相続」の特例で宅地評価額を減額
相続税の節税につながる例として最初に紹介したいのが、「小規模宅地等の特例」です。これは、自宅や事業用の宅地を相続したときに利用できる制度で、要件を満たせば宅地の評価額を最大で80%まで減額することができます。
たとえば、相続した自宅の土地の評価額が1億円だった場合、この特例を利用すれば、330平方メートル以内であれば、土地の評価額を2000万円まで下げられるということです。
この特例を利用するためには、いくつかの要件を満たさなければなりません。
まず、面積です。評価額を80%減額できるのは、居住用の場合は面積が330平方メートルまで、事業用の場合は400平方メートルまでとなっています。
相続した宅地が貸付事業用の場合は、面積200平方メートルまでは評価額が50%減額されます。ただし、貸付事業用の場合も、相続後に同じ用途で使用することが要件となります。
また、居住用の場合は、故人が亡くなるまで居住していたことも要件です。事業用の場合は故人が亡くなるまで事業をしていた土地で、相続人がその事業を継承する場合に限られます。
小規模宅地等の特例は、要件さえ満たせば、非常に効果が高い節税対策となります。宅地を相続したときは、この特例が適用できるかどうかを必ず確認しましょう。
対策2:配偶者の相続税は特例を適用して納税不要に
故人の配偶者は相続税の面では優遇されていて、相続が発生した場合、相続税が軽減される制度が設けられています(相続税の配偶者控除)。
配偶者は、相続財産のうち1億6000万円まで、あるいは法定相続分までの金額であれば、相続税がかかる場合でも、特例を適用すれば納税は不要になります。
たとえば、相続財産が1億円であれば、相続税の支払いは発生しませんし、相続財産が2億円でも、それが法定相続分の範囲内であれば非課税になります。
相続税の申告時に利用すれば、ほとんどの配偶者が相続税を課税されないこの制度。相続税の申告・納付期限を過ぎてしまうと、配偶者控除を利用できなくなるので、配偶者の税額軽減は適用ミスのないように気をつけましょう。

