頼清徳総統とはどんな人物か
すべての画像を見る(全5枚)台湾の内政を見てみましょう。
台湾には、民進党と国民党という2つの大きな政党があります。国民党は中国生まれの政党なので、「中国とは仲よくしたほうがいい」という考えが強く、その一方で民進党は中国とは距離があり、「台湾は台湾なんだ、中国とは違うんだ」という考え方が強いです。
台湾のトップは、「総統」と呼ばれます。現在の総統は、民進党の頼清徳という人です。
彼はもともとお医者さんです。炭鉱労働者の家庭に6人兄弟の5番目として生まれましたが、生後3か月のときに父親を炭鉱の事故で亡くし、母親が女手ひとつで育てました。
母親は教育熱心な人で、幼少期の頼清徳はとにかく勉強しました。一方で野球好きでも有名で、「ミスターベースボール」というあだ名まであるほどです。
11日間のハンストと暴行事件で有名になった頼総統
医者である彼はたくさんの人を助けてきました。しかし、それと同時に、自分自身も救急車のお世話になったことが何度かあります。
まず彼が40歳の時、当時の政府に反対するハンガーストライキ(ハンスト)に参加していた時のことです。ハンストとは、飲まず食わずで座りこみをし、抗議の意思を訴えるものです。
11日間、そんな飲まず食わずのハンストを続けた頼清徳は、失神して倒れます。あわてて駆けつけた救急車のおかげでなんとか命は助かりましたが、重度の脱水症状を起こしており、かなり危険な状態だったといいます。
お医者さんなのに、なんて無謀なことをするのでしょう。しかしこの事件のおかげで、頼清徳の知名度は一気に上がります。
次に彼が救急車のお世話になったのは、44歳のとき。一方通行を逆走する車を注意したところ、逆上した運転手らからバットで殴られたのです。頼清徳は目と頭に重傷を負い、救急車で緊急搬送されました。
このように、爽やかな見た目からは想像もできない波瀾万丈な人生を送る頼総統ですが、彼にはこれまで以上に困難な道が待ち受けていそうなのです。
「ミスターベースボール」は、自らマウンドに立って、これからどのような試合展開を見せるのでしょう。
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