人間ドックで指摘されて初めて耳にすることも多い女性特有の病気、子宮頸がん。どういう病気で、どういう治療をするのでしょうか。杉山産婦人科理事長で、不妊治療の専門家である杉山力一先生に伺いました。
すべての画像を見る(全2枚)子宮頸がんのきっかけはあなたの中にも潜んでいるかも…!?
子宮がんには子宮の奥にできる「子宮体がん」と、子宮の入り口にできる「子宮頸がん」の2種類があります。この2つのがんは発生する原因や発生する確率の多い年代など、さまざまな条件が異なります。今回は「子宮頸がん」について詳しくご紹介していきます。
子宮頸がんは、「ヒトパピローマウイルス(HPV)」というウイルスの感染が原因で発生するがんです。このHPVというウイルスは、実は性行為の経験のある約80%以上の女性が感染を経験する、といわれるほど、感染の可能性の高いウイルスです。
このウイルスは、感染しても約90%が免疫力によって排除されますが、この感染が長期化し、段階を経てがんとなるケースがあります。がんとなった場合、その進行状況によっては、長期にわたる治療や、死に至る可能性もあります。
そのため、子宮頸がんは重大な病気である、という認識は必ず持つようにしてくださいね。
●子宮頸がんはあなたのライフスタイルにも大きく影響します
子宮頸がんは早期に発見し、適切な治療を行えば、治る確率が高いといわれています。しかし、がんのステージ(病期)が進むにつれて、生存率は低くなり、一番上のステージですと20%を切るとも言われています。
また「治療で治る」といっても治療方法はさまざまで、妊娠しにくくなってしまう可能性のある手術や、子宮自体を切除する手術といった選択肢も発生し、治療後の生活が大きく左右される可能性もあります。
その他にも、再発の可能性や治療の後遺症など、子宮頸がんによるさまざまな影響が考えられます。その為、がんになる前の予防や検査が大切なのです。
●発症率が若年化!20代後半~30代前半は注意して
子宮頸がんは20代後半から30代前半の女性に多く発生しており、近年ではその年代の発症率はさらに増加傾向にあります。
その理由として、子宮頸がんの原因であるHPVに感染する可能性のある「性行為」を経験する年代の若年化が考えられています。
性行為の経験のある80%の女性が感染するとも言われるウイルスですから、たとえ性行為の経験が少なくても、1度でもその経験があれば、感染する可能性は十分考えられます。
●こんな症状があったら子宮頸がんの可能性も…
子宮頸がんは症状が現れにくい病気のため、定期的な検診が必要です。
また、次のような自覚症状が発生することもありますので、もし検診を受けられていない方で、次のような症状がある場合は、検査を受けるきっかけにしてください。
・不正出血(生理に関係ない出血)がある
・性交時に痛みや出血がある
・おりものの量が多い
これらの症状は子宮頸がんではなくても、なんらかの病気や体の不調のサインかもしれません。どんな病気でも早期発見が大切ですから、一度病院で相談することをおすすめします。
●子宮がんを未然に防止!予防策をチェック
子宮がんを未然に防ぐためのポイントをご紹介します。
《子宮がん検診》一番の予防策は、自分の身体の状態を正しく知ることと、病気の「早期発見」です。そのために、ぜひ定期的に「検診」を受けていただきたいです。
子宮がん検診では、問診と子宮の細胞を採取する「子宮頸部細胞診」が行われます。痛みは少ないので、安心して受けてください。
「検査」と聞くと費用が気になるところですが、お住まいの地区によって助成制度があります。市区町村から検診の案内が届いたことのある方も多いのではないでしょうか。ぜひ検診前に確認してみてくださいね。
また、検診は2年に1度のペースで受けることをおすすめします。以前受けたことがあるという方も、検査から2年以上経過していたら、病院を受診してみましょう。
細胞をがんに変えてしまう物質を含むのがタバコであり、「喫煙」という習慣です。実際、喫煙者は子宮頸がんのリスクが高まるという研究結果も出ています。喫煙は妊娠においても、そして生活においてもさまざまな影響があるため、医療的観点からは禁煙、または量を減らしていくことをおすすめします。
●もしがんになったら医師と相談して適切な治療を…
子宮頸がんは、大きく6つのステージに分かれており、どのステージにいるか、また、本人の年齢や健康状態によって治療方法は異なります。
症状が初期であれば、手術をせずホルモン治療のみでの完治が期待できますが、病状が進行することで、「手術」という選択肢が出てきてしまいます。
手術には、子宮頚部の一部のみを切除する「円錐切除術」や、子宮を切除する「子宮全摘出術」などがあります。
円錐切除術は、子宮を残すことができるため、妊娠は可能ですが、子宮頚管が狭くなることによる再開通手術が必要になったり、妊娠後も早産の可能性が高まったり、といった影響が出てきます。
子宮全摘出術は、妊娠ができなくなるということに加え、尿が出にくくなる、骨粗しょう症のリスクが高まる、といった可能性も出てきます。
どの治療を選択するかで、その後の生活を大きく左右する可能性があります。担当医から説明を受け納得いくまで相談することはもちろんですが、パートナーやご家族ともしっかり話し合いをしてください。もし担当医との話だけでは不安、という方は、ほかの病院や医師に相談する「セカンドオピニオン」もおすすめします。
子宮頸がんは、ウイルスに感染する可能性が高い一方で、定期的に検診を受けることで予防できる可能性も高い病気です。
しかし、まだ日本ではこの定期的な検診が浸透しておらず受診率は高くないのが現状です。
がんという病気のリスクをしっかりと理解して、定期的な検診を受ける、また、気になる症状があればすぐに医師に相談する、という習慣をつけていきましょう。