実母が認知症という、文筆家の朝倉真弓さん(現在50代)。一般的なマナーにそってお見舞いの服装を選んでいたそうですが、夫のある行動がきっかけで実母が笑顔を取り戻し、自身の服装も見直すようになったそう。ここでは、そんな高齢になった親との向き合い方にまつわるエピソードをつづります。

朝倉さん服
明るい色の服を着て、認知症の親のお見舞いに行くようになった理由とは?
すべての画像を見る(全5枚)

母が認知症になり、介護生活がスタート

車いす

私の母は80代。父と共にケアハウスで暮らしています。

父は自立しており元気に生活していますが、母は認知症を発症。思えばかなり前からその兆候がありましたが、背骨を圧迫骨折し、歩くことができなくなってしまったのをきっかけに、徐々に悪くなっていきました。

現在は介護士さんの手を借りながら、車いすで生活をしています。

夫の赤いスニーカーがきっかけで、母が笑顔に

母はケアハウスに落ち着くまで、何度か入退院をくり返しました。

赤いランニングシューズ

その度にお見舞いに行っていたのですが、ある日、夫が履いていた赤いランニングシューズに目を留めるとパッと明るい表情になり、「あら、赤! いいわね」と言ったのです。目も悪い母ですが、明るい色はわかるようで、何度も何度も「きれいね」と喜んでいました。

思えば母は若い頃から派手好きで、明るい色を好んでいました。娘の立場からすると、ファッショナブルな格好で授業参観に来られるのが気恥ずかしく、「お願いだから地味な格好で着て」と怒っていたぐらいです。

そんな母も介護を受ける立場になり、おしゃれとは無縁な生活になってしまいましたが、今でもパキッとした色の服やアクセサリーは気になるようです。

派手すぎるかも?という思い込みを手放したら

朝倉さん後ろ姿
※写真の場所はイメージです。介護施設や病院内で撮影したものではありません

病院や介護施設には、お世話をしてくださる看護師さん、介護士さんがいらっしゃいます。そんな方々の手前、「華美ではない服装」で訪れるのがマナーだと思っていました。実際調べてみると、お見舞いや面会の際の服装としては、以下のようものが好ましいとされているようです。

・色はおだやかな白やパステルカラー、グレーなど
・色やデザインともに、派手ではなく落ち着いたもの着用する
・黒や赤は、死や血液を連想させるため避ける
・アクセサリーはつけないか、控えめなものにする

私も最初はベーシックカラーの服で通っていたのですが、母はムスッと、不機嫌なまま。ですが、夫の靴の一件以来、明るめの色の服を着ていくようにしたところ、母が笑顔になり、会話もふくらんでいきました。

今では母の刺激になるように、あえて華やかな色の服や大きめのアクセサリーを身につけるようにしています。