12月20日から22日まで開催される第93回全日本フィギュアスケート選手権。スペシャルアンバサダーを務める宇野昌磨さんと、大会実況を担当するフジテレビのアナウンサー3人に、それぞれの考える見どころを語ってもらいました。
すべての画像を見る(全15枚)友野一希選手をはじめとする年上勢にがんばってほしい
宇野昌磨さんに聞きました。
――スペシャルアンバサダーとして、今年の全日本選手権の注目ポイント、注目選手を教えてください。
全日本選手権は僕の勝手な独断ですが、どの試合よりも緊張感のある大会。とくにトップを目指している人は年明け後の大会の派遣がかかっているので、この舞台で結果を残さないといけない。会場の雰囲気も含め、いちばん緊張する大会ですね。だからこそ、みんながいろんな思いを込めて、シーズン前半の集大成のような気持ちで挑むと思います。ときにはみんながノーミスする年もあれば、みんなが失敗する年もある。とくに男子はそれが顕著に出やすいです。
僕の注目選手は、がんばって欲しいという意味も込めて友野一希くん。ジュニア時代から長く一緒にやってきましたし、一希くんは仲がいいからいえますけど、行けるか行けないかみたいなギリギリのラインというか、そういうところで日々努力しています。悩みながらいろんな試行錯誤を重ねているところも見ています。
もちろんそれは選手全員が同じではありますし、若い3人(鍵山優真、佐藤駿、三浦佳生)も勢いがありますが、やっぱり先輩として一希くんや山本草太くん、島田高志郎くんにがんばって欲しいというのが、いちスケート仲間としての意見ではあります。
技術的な面で言えば、やっぱり鍵山優真くんは頭ひとつ飛び抜けていますし、三浦佳生くんは間違いなく優真くん以外のメンバーではいちばん点数が出せるポテンシャルをもっていると思います。ただ、フィギュアスケートは安定した演技をするのが難しいスポーツでもあります。今年はオリンピックのプレシーズンということもあり、みんないろいろなことに挑戦しているなと、見ていて思います。
それぞれがどんな緊張感、どんな心境で、どんな気持ちの変化を持ちつつ試合に挑むのかというのを見るのは楽しみですし、この全日本という舞台で今までの経験を経て年上勢がどんな演技をしてくるのかに僕は注目しています。
●全日本選手権は一人ひとりの個性が満載
――宇野さんは全日本の前はどのような気持ちで臨んでいましたか?
全日本の前はグランプリファイナルに出場することが多かったので、短期間で準備をしなくてはいけなくて。なかなか全日本に万全なコンディションで出られることが少なくて、すごく難しい試合というイメージではあります。僕は「全日本がシーズンを通していちばんいい演技だったね」ということは一回もなくて、苦しいながらもできることをしてきた感じでしたね。
――全日本まで勝ち残ってきた選手たちのどういう部分を見て欲しいですか?
会場で見てもらえたらわかると思うんですけど、本当にちょっとした音ひとつでも響くようなものすごい緊張感の中で試合が始まるんです。何千人という人が自分の手の動かし方や足の動きひとつひとつに注目していて、その場を支配しているような気持ちになって演技をする。それが見ている側もすごく緊張感をもたらしますし、スポーツとしても「だれが勝つんだろう」と見ていて楽しいと思います。
フィギュアスケートは一人ひとり個性が出るスポーツなので、あまり見たことない人でも最初に全日本選手権を見ていただけたらフィギュアスケートの魅力、スポーツとしての魅力がすごくわかりやすいのかなと思います。
●今季、注目のプログラム
――今季、お気に入りのプログラムはありますか?
友野一希くんのショートプログラム『Tshegue』は彼のよさがすごく出ていて、衣装もいいですよね。やっぱり一希くんにしかできないものを見たいから、今季いちばん好きかな。今はジャンプに重きを置かれがちな中で、あんなプログラムを見ると僕は楽しくなります。
それぞれ個性がある中で、(個性が)一辺倒にならないように、自分をより成長させる意味合いも込めて、みんないろんなプログラムに毎年挑戦しています。僕もそういうプログラムがありました。最初は無理かもと思っても、シーズンが終わってみたらそれがすごくいいプログラムになったということも。
――『ボレロ』などがそうでしたね。
そうですね、『ボレロ』は大変でした(笑)。ほかにお気に入りは、高志郎くんがいちばん仲がいいから贔屓(ひいき)目かもしれないですけど、高志郎くんに全日本の舞台で僕を感動させる演技をして欲しいです。
――宇野さんを泣かせるくらいの。
僕は正直スケートで感動して泣いたことがあまりないので、(感動)させてみて欲しいですね。今まで一回もないんですよ、意外と見る側だと緊張しちゃってリラックスして見られないので、年上勢のそんなプログラムを見られたらいいなと思います。
みんな本当にいろんな試行錯誤をしていると思うので、無理なくがんばって欲しいところではあるんですけど、やっぱり見る側としてはこのシーズン前半の集大成としていい演技を期待してしまう気持ちもあります。年上勢はみんな話を聞く限り、現役生活がそんなに長くないというのもなんとなく感じているので、一回でも多くのすばらしい演技を期待しています。