“合言葉は「おいしい時間」”

――今回からムック全体にも、“合言葉は「おいしい時間」”というキャッチコピーが掲げられています。

長谷川:私は本当にわがままな人間ですし、ミーハーなところもあるので、常に「おいしい気持ちで生きていたい」と思っているんです。ここでいう「おいしい」は、ごはんの味という単純な意味もありますが、暮らし全般で「楽しい」「テンションが上がる」という意味も込めています。

たとえばせっかく料理をしたあとに、「今日は料理をしたせいで疲れた。つくらなきゃよかった」って思いたくないですよね。いくら家族が喜んでくれても、自分が疲れすぎてしまうようなことがあったら、もったいないと思うんです。

私はせっかく料理するなら、常においしい気持ちでいたい。「食べておいしいだけじゃなく、つくる時間がおもしろくて、ワクワクして、心も満たされて、なんだか得をしたぞ!」という気持ちでいたいと考えて食事づくりと向き合っています。そういうおいしさを共有したいというのが、理由のひとつ。

もうひとつは、一般的なレシピ本であれば、シンプルにおいしい料理が載っていればいいと思いますが、この本は雑誌の形だからこそ、レシピ以外の情報や読み物のところも含めて、読んで「いい時間を過ごしたな」「具体的に得るものが多かったな」と感じていただきたい。この1冊が冬のお供にあれば、おいしい思いがもたらされますよという意味も込めて、“合言葉は「おいしい時間」”というキャッチコピーにしました。

「HIBIBIBOUROKU」ページより、シカゴ旅行中の1カット
「HIBIBIBOUROKU」ページより、シカゴ旅行中の1カット
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――「肉まん食べ比べ大会」では全国各地の肉まんをにぎやかに紹介をしたり、「HIBIBIBOUROKU」では長谷川さんのちょっとしたこだわりや日常の習慣を取り上げたり、読み物ページの自由度も前作よりさらに増した印象です。

長谷川:今までは、レシピを通して自分という人間を伝えようとしてきて、そこに共鳴してくれる人がいたらうれしいなと思っていました。でも、反対側から見せていくというか、まず自分を開示することで、「この人と気が合いそう」「この人のレシピをつくってみたい」と興味をもってもらう、というやり方をしてみたいなと。思考やものの選び方、ファッションセンスと食の好みって絶対リンクしてくる部分があると思うので、そこがつながってくるといいですよね。

SNSでレシピというものがバンバン流れてくる時代だからこそ、より効率的に読者と料理家がマッチングできたほうがいいし、1人の人間に焦点を当ててじっくり読んでもらうことで見えてくる、新しいレシピの読み方みたいなものがあると思っています。