もしもわが子になんらかの障害や病気が見つかったら――。そんな思いは、親ならば誰しも一度は抱いたことはあるのではないでしょうか。小学校3年生のとき「トゥレット症」だと診断され、以来病気と共に生きてきたと語るのが、著書『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』(扶桑社刊)を上梓した酒井隆成さんです。そんな酒井さんに、ご自身の体験をもとに、病気が発覚してからの家族との向き合い方や、親が子どもの病気や障害を受け入れるためのヒントを伺いました。
すべての画像を見る(全2枚)小学3年生のとき、名前のわからない病気が発覚
本人は意図してないのに、街中でいきなり大声を出してしまう。身体が反射的に動いて、机や壁に自分の手足を打ちつけてしまう…。こうした、身体や声に突然出現する「チック」と呼ばれる症状を複数抱えるのが、神経発達症の一種であるトゥレット症です。
この病気の当事者である酒井さんは、小学校3年生の頃に病気を診断され、以来、この病気と向き合い続けてきました。病気発覚時の心境について、酒井さんはこう振り返ります。
「当時、僕自身も大変でしたが、同様に両親もすごく大変だったと思います。まず、トゥレット症という病気は、まだまだ知名度が低い病気なので、病名を聞いても、親も僕もどんな病気なのか全然わかりませんでしたから。僕も『いったいどんなことになってしまうんだろう』ととても不安でしたし、いちばん近くで僕の世話をしてくれていた母は、それ以上に不安だったでしょうね。心理的な負担もかなり大きかったと思います」
自分の気持ちを汲んでくれた母に感謝
病気発覚後、「特殊学級に行ってはどうか」と周囲から言われることもあったそうですが、酒井さんは中学、高校、大学に至るまで、すべて普通学級に通うことを決意。その決断を実行できたのは、「間違いなく両親のサポートのおかげ」と語ります。
「今振り返ると、両親は僕がほかの子たちと一緒に過ごせるように、学校での環境についてすごく配慮してくれていたと思います。たとえば、クラス替えのとき、仲の良い友達と一緒になれて喜んでいたのですが、後で聞いたら、親が学校側に『この子はこういう病気があるので、できるだけストレスのない環境をつくってあげてほしい』と働きかけてくれたからだと知りました。その事実を聞いたときは、親に感謝しましたね」