今年の夏も厳しい暑さだったものの、少しずつ秋の気配も感じられるようになりました。愛媛と東京の二拠点生活をする作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんに夏の思い出とともに、9月以降も楽しめる浴衣についてつづってもらいました。

暮らしっく
高橋久美子さん
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今年の暑い夏を振り返って…

立秋を過ぎ、目に見えて日の出は遅く、日の入りは早くなった。7月は朝5時過ぎから草刈り機をかついでいたけれど、今は山際が白むのも6時前だった。日が出ないと、頭もぼんやりと夢の中。目覚ましを少し遅くした。

鈴虫の声も聞こえはじめ、夏の終わりを感じつつも、残暑は相変わらず厳しい。6時から畑に出ても10時にはきり上げた。

1か月半、雨が降らなかった。近隣の街ではスコールがあったと聞くのに、実家周辺は呪われてるんだろうかと思うほど降らない。山で隔たれると、こんなにも天気が変わるのか。

野菜だけでなく草さえも真っ赤になって枯れていった。川から水を引いたところだけはぐんぐんと草が伸びて、植物が水をごくごく飲んでいる音が聞こえそうだった。

9月に入っても浴衣を楽しめる

へこたれそうな夏。花火大会や夏フェスが秋に変更になった地域も多いと聞く。高校野球も朝と夕の開催になり、ほっとした。

浴衣を着る女性と子ども

浴衣を着て姉やその子どもたちと地元の盆踊りに参加した。暑くて暑くて、浴衣を着る気にならなかった人も多いでしょう。でも、そんなときこそ、夏を楽しんだもの勝ちだ。和服はいろいろ大変と思うかもしれないけど、浴衣は別だ。

和服の中ではいちばんラフな格好なので、気楽に自分流で着たらいい。コロナもあって、しばらくタンスから出してないという方も多いと思うので、防虫剤を取り替える機会としてもいいよ。少し暑さが落ち着いた9月に着る人も多いようなので、まだ間に合う。

浴衣の洗い方・しまい方

浴衣はその後の洗濯が面倒と思っていませんか? 本来は普段着、というか昔は寝巻きだったのだから、家で洗濯できるようにつくられている。多くは綿100%だったり、ポリエステルのものもある。まずタグを見てみよう。

私が昔、着つけの先生から教えていただいたのは、水でしっかりと濡らして軽くしぼって、シワを伸ばし日陰干しにしておくと、水が蒸発するのと一緒に汗もほぼ蒸発するよということでした。襟元や脇などとくに汗をたくさんかいたり、食べ物をこぼしてしまったところは、中性石鹸で手洗いしている。

染めの浴衣は目立たないところを水につけてみて、たくさん色が落ちるようだったら、なるべく洗剤を使わないほうがいいでしょう。絹や、絹の混ざった生地は家で洗濯せず、クリーニングに出しましょう。

よくないのは、汗をかいたまま干して、そのままタンスにしまってしまうこと。来年以降、汗染みになったり、虫に噛まれる原因にもなる。

気になる人は夏の終わりにクリーニングに出すことですが、クリーニング屋さんもきちんと選ぶことをおすすめします。絞りの浴衣をクリーニングに出したら、きっちりアイロンをかけて戻ってきて、絞り独特の凹凸が伸びてしまったという友人もいたので、高価な浴衣は和服も扱っているクリーニング屋さんに出す方が安心だと思う。

浴衣は自己流に着たっていい

着つけも楽に。下は足さばきが悪くならないように裾除けを巻くのがいいけれど、上は肌襦袢(はだじゅばん)を着なくても、薄手の白いTシャツでも大丈夫。下駄が慣れない方はサンダルで。最近はお子さんだけでなく、大人用のすてきなへこ帯もありますよ。もう汗だくで帯と格闘しなくても、もっとラフに自己流に着ていいのです。

盆踊り

盆踊り会場にいくと、みんな自分らしい浴衣の楽しみ方をしていて、いい時代だなあと思った。盆踊りがはじまり、和太鼓に合わせてみんなで踊った。

踊り子に名乗りをあげる人がなかなかいなくて人集めに苦戦していると聞き驚いた。下手でもなんでも、暗がりだから顔なんて見えない。私も見様見真似で踊り始めて、2周するころにはまあまあ踊れるようになっていた。子どもの頃、もっと小さな地域ごとの盆踊りがあって、毎年踊っていたから、体に動きが染みついているんだなと思った。

同じ町に暮らす、知らないだれかと輪になって踊る。こういうことから平和が生まれるのかもしれない。

“踊る阿呆と見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃそんそん”

花火

徳島で過ごした大学時代、阿波おどりとともに、私はこの合言葉を人生の軸にしたように思う。阿波おどりのように、大きな祭りでなくても、それぞれの地域で自分の体で踊りを感じることの大切さを思った。祈りながら、夏を噛み締めながらひたすら踊った。その後で見た花火は格別だった。

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