斬新なパリ五輪の開会式を「ほかの人がしていないことに挑戦するフランスのエスプリが表現されていた」と話すのは、フランス文化研究者・翻訳家のペレ信子さん。そんな自由を尊重するフランス人は、気分が落ち込んだり悩むときに文学や先人の言葉に心のよりどころを求めるそう。そこで、ペレ信子さんが疲れた心に効く、フランス語の表現やことわざを4つ紹介します。

プール付きの家
人生を愛するフランス人が心のよりどころにしている言葉(※画像は全て著者撮影のイメージ写真です)
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思ったように事が運ばないときは自分の心に聞いてみる

フランスの朝食の例

「Vouloir le beurre et l’argent du beurre」(バターとそのバターの代金も欲しがる)

欲しかったものを手に入れたのに、それに満足せずに不平を言っている、もしくはすでにたくさん持っているのに必要以上に欲しがっている、というようなシチュエーションでよく耳にする言葉です。

ステキなアパルトマンに住んでいるのに、もっとパリの中心地だったらよいのにとか、親に車を買ってもらったのに中古だから残念、などと思うこと。人ごとだと「まあなんてぜいたくな」と思えるのですが、自分ごとだと意外にそんな考え方をしていることがありませんか。もしある事柄について手放しで喜べない状態だったら、バターとバターの代金を欲しがっていないかな? と自問するようにしています。

いくら考えてもどちらを選んだらよいかわからないとき

夜になって灯りの点いた家

「La nuit porte conseil」(夜がアドバイスを持ってくる)

どちらの道を選ぶか、人生の重大な岐路に立ったとき、ここでなにかが大きく変わると思うとき、決断を下すのは難しいもの。大切なことだけに、長い間考えてしまいがちですが、そうするとますますわからなくなってきます。

そんなときは無理に判断せず、一晩おいて待ってみましょう。朝起きてみれば、夜が持ってきてくれた答えがそこにあるということわざです。

このことわざには私自身もよく助けられています。迷ったらその日に決めずにまずは寝てしまう。そして朝起きたときに、フレッシュな状態で考えると昨日は見えなかったものが見えてきたりして、すっきりと判断できることがあります。