子どもがほしいのになかなかできない…と悩む夫婦が「妊活」や「不妊治療」を始めるケースが珍しくなくなっています。
そもそも「不妊」とはどういう状態で、どんな治療をするのでしょうか。また、不妊治療にかかる費用はどのくらいで、スタートする時期はいつがいいのでしょうか。
不妊治療に詳しい医師・杉山力一先生に伺いました。

妊活はいつから? どんなことをするの? 医師に聞きました

不妊とは、「1年間、避妊をせずに性交しているのにも関わらず、妊娠できない状態」のことを指します。約8割のカップルが普通に妊娠できる一方で、約2割のカップルが「不妊」に悩んでいるといわれています。

●不妊治療、いつからスタートすればいいの?

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まずは基礎体温を把握しましょう
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不妊が気になったら、まずはご自身で毎朝体温を計り、排卵日を把握することを始めましょう。排卵日に合わせて性交するのが理想です。

先述したように、不妊の定義としては「1年」という基準が設けられています。しかし、あくまでも基準ですから、ご自身の状況に合わせてタイミングを判断しなければなりません。
30代中盤以降の方でしたら、1年待たず、もう少し早い段階で医師と相談し、不妊治療に踏みきるか否かを判断するようにしましょう。

また、年齢にかかわらず、普段から生理不順がひどいなど、生理の状況に不安がある方は、期間を設けず、まずは一度病院ご相談されることをおすすめします。

不妊は「人によって原因が異なること」がほかの一般的な病気と違うところです。そのため、一人一人の症状に合わせて治療方法を選んでいきます。

●不妊治療ってどんなことするの?

一言で「不妊」と言っても、人によって治療方法もさまざま。
たとえば、子宮や卵管といった妊娠に欠かせない部分に感染症や腫瘍がある、などといった問題がある場合には、その問題の原因を手術や薬の服用で取り除く治療が必要です。
また、排卵がうまくいっていない場合には、排卵を促す治療が必要になってきます。

それでも妊娠が難しい場合、体外受精や人工授精といった治療にステップを進めていきます。

●不妊治療っていくらくらいかかるの?

不妊の原因が多岐に渡るため治療にかかる費用もさまざまですが、一般的な治療法としては「タイミング法」「人工授精」「体外受精」が挙げられます。

(1)タイミング法(一部保険適用)

医師の指導のもと排卵日を特定し、適正なタイミングで妊活を進めていく方法です。排卵誘発剤などは保険適用、排卵日をみる超音波検査は保険適応外になります。費用は一回の診療で数千円です。

(2)人工授精(保険適用外)

子宮に直接精子を注入し卵管・卵子に精子を届きやすくする方法で、1回あたり3万円程度かかります。

(3)体外受精(保険適用外)

卵と精子を取り出し、人工的に受精させ子宮に戻す方法で、1回あたり40~50万円程度必要です(※初回は助成金あり)。

不妊治療においていちばん課題となるのがこの費用です。日々の生活費から、これらの費用を捻出しなければなりません。そのため、不妊治療では「体の状態に合った、より最適な方法を選択する」ことと、「助成金制度を忘れずに利用する」ことがポイントです。
まずは担当医師と相談し、ご自身でも症状を把握し、そしてパートナーとしっかりと話し合いましょう。

また、助成金についても確認してみましょう。
たとえば、高額な費用がかかる体外受精ですが、初回は助成金を利用できる場合があります。不妊治療の方法や、住んでいる地域によって受けられる制度が違ってきますので、治療をする前に必ず確認してみてくださいね。

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妊娠しやすい体をつくる要素と食材って?

妊娠しやすい体づくりのために医学的に根拠のある栄養素は2つ、「ビタミンD」と「葉酸」です。

●妊娠しやすい環境づくりのための「ビタミンD」

ビタミンDは「妊娠しやすくい環境づくり」のための栄養素です。ビタミンDは卵子の成長や着床を促す働きがあり、不足することで排卵障害を引き起こす可能性が。妊娠のためには欠かせない栄養素なのです。

とくに現代の女性はビタミンDの不足が指摘されています。不足の原因として「屋外での活動時間の減少」が挙げられます。
ビタミンDは日光を浴びることで摂取できますが、仕事でもデスクワークがおもだったり、移動やプライベートもなるべく日の当たらない場所を選んだり…と、屋内での生活が中心となっている方が多いのではないでしょうか。

そのため、不足しているビタミンDを食材でも補うよう心がけましょう。身近な食材としては、魚介類やキノコ類、卵黄などがおすすめです。

●健康な赤ちゃんを産むための「葉酸」

サプリメントのイメージ

葉酸は、赤ちゃんの身体の正常な発育に必要なビタミンの一種で、新生児障害のリスクを減らす役割を持つ、「健康な赤ちゃんを産む」ための栄養素として知られています。

妊娠を計画したら積極的にとりいれていくことが大切で、とくに妊娠1か月以上前から妊娠12週までは不足しないよう気をつけなければならないといわれています。

その理由は、赤ちゃんの先天異常の多くが、妊娠直後から10週以内に発生しているため。この時期に葉酸が不足すると、先天的な疾患のリスクが高まるとされています。

葉酸は、野菜や果物に多く含まれており、食材としては、ホウレンソウ、グリーンアスパラガス、納豆、海苔、イチゴなどがあります。

ただ、葉酸は水に溶け出しやすく熱にも弱いため、調理を経て実際に食べるときには、約半分にまで減ってしまうとも言われています。

調理方法や食べ方に工夫して、葉酸を食生活に取り入れていってみてくださいね。

ここまで不妊・不妊治療についてご紹介してきましたが、やはり大切なのは、妊娠に向けて「自身がどうしたいか」「パートナーがどうしたいと考えているか」という、気持ちの部分が同じ方向を向くことだと思います。

妊活・不妊治療には、自身の年齢、症状など、考えなければならない要素がたくさんありますが、一人で悩まず医師やパートナーともじっくり相談して、ご自身に合った妊活・不妊治療を選んでいってくださいね。

【教えてくれた人】 ●杉山力一医師

杉山産婦人科理事長。日本における生み分け法の権威である杉山四郎医師の孫。東京医科大学産科婦人科医局では不妊治療・体外受精を専門に研究。その後、1999年より杉山産婦人科勤務。監修する女性向けアプリ「eggs LAB(エッグスラブ)」では、高い精度での生理日・排卵日予測を実現。不安定な生理周期にも対応した適切なアドバイスや、妊活に関する情報まで、個々の身体の状態にフィットした情報を発信中。