悲しみと孤独の淵から立ち上がろうと必死にもがく

医師によると「妊娠初期での流産の多くは染色体の異常が原因で、よくあることだからしょうがない」とのこと。

「私としては全然しょうがなくない。よくあることなんかですませて欲しくないという気持ちでした。夫も夫で『大変だったね』と労わってはくれたものの、『また次がある』と前向きな感じ。もう私は『そんな今すぐ次なんて考えられないよ!』って泣いちゃって。今までの人生でいちばんしんどかったです」

メンタルが崩壊しそうな状況でも、仕事も育児も、日常は変わらずに続いていくのが人生。正美さんはなんとか立ち上がろう、生活を立て直そう、それだけに集中し必死に暮らす日々が続いていました。

そんなある日のこと。ついに抑えていた感情があふれ出す事態が。

「大っ嫌いなあの女を見かけてしまった」

あの女
※写真はイメージです
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長男を保育園へお迎えに行く途中の夕暮れ。30分だけ早く着いたので、近くの雑貨屋さんに立ち寄りました。そこは子ども向けのオモチャが充実していて、長男が喜びそうなものはないかと見つくろっていたときです。

聞き覚えのある声に、正美さんの心臓はギュっと痛みました。

「私とペアで仕事をしていた、あの意地悪な指導係の先輩でした。私の最初の妊活中、休むたびにさんざん嫌味を言ってきた女。その人は私が産休と育休を取っている間に、授かり婚をして会社を辞めてしまったので、もう会うことはないと思っていたのですが、お店のなかで赤ちゃんを抱っこして買い物をしていたんです」と正美さん。

「私は流産をした直後だったので、生まれたばかりの乳飲み子を抱いてうれしそうにするあの人を見たら、心がぐちゃぐちゃになっていくのを感じました。人の幸せを喜べない自分にも嫌悪感を持ちましたし。あぁダークサイドに堕ちちゃったんだ…って」

こみ上げてくるいろいろな感情に飲み込まれそうになるのをこらえ、急いでお店を出て、人気のない場所で大泣きしてしまった正美さん。その後、夫から「お前は惨めな奴だ」と言われて心が離れたお話はまた次回。

 

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