国によって大きく異なる教育事情。じつは今、東南アジアの国・マレーシアの教育が注目を集めています。マレーシア政府観光局によると、コロナ禍以降マレーシア留学への問い合わせが急激に増えているそう。マレーシアを取材で訪れたトラベルジャーナリストの岩佐史絵さんに、「マレーシアの教育事情」について語ってもらいました。
マレーシアってどんな国?
すべての画像を見る(全9枚)東南アジアの主要国のひとつで、首都・クアラルンプールは高層ビルが立ち並びとても近代的な一方、のんびりとしたビーチリゾートや歴史を伝える世界遺産の街並みなど、旅先としても見どころがたくさんあります。
特筆すべきは、多民族国家でマレー系、中国系、インド系の住民がそれぞれの独自文化を保ったまま生活を送っていること。「●●人街」などと区切りがなくモスクとヒンドゥー寺院が同じ通りにあったりして、異文化が共存しています。
興味深いのは、ほとんどの国民が公用語のマレー語以外の言語も解すること。前述のとおり民族間のギャップが少ないため、生活のなかに多言語があるのが当たり前。さらっと自分の母語以外の言葉が出てくる人が非常に多いのです。
高等教育を受けた人同士なら英語で会話することも一般的。どこでも英語がよく通じるため、外国人にとっても気軽に訪れることができる国であるといえます。
教育現場にも大きな特徴
教育制度は初等教育6年、中等教育5年(前期・後期合わせて)、そのあと大学予備コースが1年半となっています。とくに義務教育という概念はありませんが、中等教育までは政府からの援助があるのでほとんどの子どもが学校に通います。
ホームスクーリングも盛んで、不登校児向けというよりも教育機会の多様性によるものというとらえ方がされています。
公立校では公用語のほか、中国語やタミル語(インド系)で授業を行う学校も選ぶことができます。ただし、どの学校でもマレー語と英語は必修になっており、幼少時から複数の言語を学ぶ習慣があるのがマレーシア。
さらに、公立・私立の別なくそれぞれの民族の文化に配慮されていて、旧正月などのイベントに敬意をもって全員が参加するため、おのずと多文化を体験することにもなるのです。
朝食も学校で!?マレーシアのお弁当事情は?
マレーシアの学校には日本のような給食はありません。が、小学校でも学食があって、利用するかどうかがそれぞれの判断に任されているのは、ベジタリアンなど文化的・宗教的な理由で食事の制限がある子もいるから。こういうところもまた、多民族国家のマレーシアならではといえるでしょう。
学校にもよりますが、学食では好きなおかずを自分で選びます(お弁当スタイルで全員同じメニューの学校もあります)。盛りつけは子どもの年齢に応じて大人がサーブするようになっていて、好きなものだけをたくさん取ったりしないよう配慮されています。
メニューも日替わりで中華・洋食・マレー料理といったように変化をつけている学校が多いので、子どもたちがいつもメニューにわくわくしているところは日本の給食と似ているかもしれません。
日本と違うのは、学食では朝ごはんやスナック菓子なども売られていること。もともと外食文化ゆえに、朝食を外ですませることは珍しいことではありません。また、小学校でもお昼前におやつの時間を設けている学校もあり、まめにちょこちょこ食べるイメージです。
とくに小学校では学校にお金を持っていくなんて? と不安になりますが、私立の学校ではプリペイドカードを導入するなどしている学校が多く、トラブル防止に努めています。
低学年のうちから自分で食べたいものを選び、持っているお金でなにをどのくらい買えるのかを考えることで金銭感覚を身に着け、栄養について自ら考えることができるようにもなるのだそうです。