●つぎの日に行われたのは…
つぎの日、旅館のまえは大勢のひとで賑わっていた。イベントの準備が進められている。横断幕にはこう書かれていた。
「第10回・皿投げ大会会場」
この競技は積もった雪に書かれた的に向かって皿を投げ、的の中心に近ければ近いほど点数になるというゲームだ。皿を3回投げて、得点の合計で競う。雪のうえに落とすから、皿は割れない。
皿を投げるときは、正確なコントロールが求められる。すこしでも調子がズレると、皿は中心から外れてしまう。毎年、この時期になると全国から腕に覚えのある人間が集まって技を競っているのだ。わたしもこのときのために一年間、練習を積み重ねてきた。
精神を研ぎ澄ませて皿を投げる。1回、2回、3回……くそっ。一瞬だが手元がくるった。
しかし、勝負ではその一瞬が大きな差となって現れる。
わたしの順位は3位という結果に終わった。
1位は──ハンチングの男だ。
テレビのクルーがかれに近づいて、取材をしている。
「10連覇、おめでとうございます。勝利したいまのお気持ちは?」
「そうですね。自分との戦いでした。周りの雑音を気にせず自分のことに集中できたことがよかったんだと思います」
かれはハンチングを脱いで話していた。
【編集部より】
雪のうえなら皿を落としても大丈夫ということでしょうか? キッチンに雪を敷くなんてできません。もしやったらとても寒いです。皿を割らないコツは丁寧に扱うだけでなく、割れない素材の皿を買うといった手段もあります。
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