「終活」という言葉が広まり、お葬式が家族の話題になることも増えてきました。最近はお葬式の規模やプランなど内容面の希望や資金の準備について、親から子へ前もって伝えるという人も多くなっています。

「忙しさや縁起の悪さから話し合いを避けてしまうと、いざというとき、費用や参列者の基準をどこにおけばいいのか迷ってしまいます」と語るのは、葬儀関連サービス企業でPRを務める高田綾佳さん。

葬儀の現場でよく聞かれる声をもとに、舞子さんという方のトラブル例を紹介してくれました。

エンディングノートをつける母のイメージ
密かにエンディングノートをつけていた母(写真はイメージです)
すべての画像を見る(全3枚)

年金暮らしの母が突然亡くなり、長女が喪主を務めることに

舞子さんは、都市部に住む50代の主婦。母の住む実家の近所にマンションを買い、夫とともに暮らしています。
70代になる母は、5年ほど前に父が亡くなってからはひとりで年金暮らし。結婚を機に他県に越した妹もいますが、父の死をきっかけに疎遠になっています。
舞子さんはパートの合間を縫って月に一度ほど生活のサポートをしていました。

2年ほど前から、母は舞子さんに「2人に自分の死んだ後のことを相談したい」とたびたびもちかけるようになりました。なにかに迷っているというよりは、決めたことを伝えたいような様子だったので、縁起でもないとは思いつつもどこかで時間をつくらなければと心に決めた舞子さん。
妹に母の話を伝えたところ「私も折を見てそちらに行くね」と前向きだったものの、なかなかタイミングが合わないまま時間がたってしまいました。

そんなある日、母が外出先で急病を患ってしまいます。舞子さんが駆けつけたころには会話ができない状態に陥っていて、話もできぬ間にそのまま亡くなってしまいました。

急いで戻ってきた妹と話し合い、舞子さんが喪主としてお葬式をあげることが決まりました。早速いくつかの葬儀社から資料を取り寄せたところ、規模を最小限にすることで安くお葬式をあげられるプランに目を奪われました。

マンションのローンと大学生になる子どもの学費で家計が圧迫され、金銭的に余裕がない舞子さん一家。
「それに、母は年金暮らしだったので葬儀代金を賄えるほどの貯金もないに違いない。喪主としてしっかり判断しないといけないわよね」
そう考えた舞子さんは、夫にも相談したうえで、一家から持ち出せる金額であげられる家族葬プランに即決し、葬儀社に連絡。その後、妹にプランの規模を説明し、親戚数名に声がけするようお願いしました。

すると、妹は母の友人も参加できるような、もっと大規模なお葬式の方がよかったと言い出したのです。「お母さんはもっといろんな人に見送られたかったかもしれない」と不満げ。
それでも舞子さんが自身と母の懐事情について説明したところ、いったんは納得し、二人は無事に母を送り出しました。

ところが、実家を処分するため遺品を整理していた時に事態は一変します。