●父から譲り受けたもの
すべての画像を見る(全2枚)父は祖父の仕事の都合で14歳の頃からスウエーデンで育ちました。おじいちゃんの計画通りに物事が進んでいれば、父はスウエーデンの大学を卒業後、すぐに帰国する予定でしたがそう上手くは行きませんでした。父は美しいスウエーデン女性と恋をして、私が生まれたのです。そのとき、すでに次の勤務地に移っていたおじいちゃんはカンカンに怒って、それまで与えていた生活費や車、アパートをすべて取り上げ、「好きにすれば!」と父を勘当しました。
私が生まれたとき、父は20歳、母は19歳。父は生まれ故郷の日本が恋しくて、何とかして帰りたい! と考え、母と相談した結果、母がスカンジナビア航空で働くことに。当時、ある年数を働くと社員とその家族のエアーチケットがだいぶ安く手に入ったのです。初めて日本に遊びに来たのは、私が4~5歳の頃。怒っていたはずのおじいちゃんは、大喜びで新しい家族を迎えてくれました。
それからは、母の社員割引を使って2年に一度は夏休みを日本で過ごすように。その後、父の仕事の都合で私たち家族は日本に移り住むことになり、父が念願だった東京での暮らしがスタートしたのですが、残念なことに2年も経たないうちに両親は離婚。私は父と離れて暮らすことになり、自然と会う機会も減っていきました。
それから40数年もの月日が経ったある日、生まれて初めて父から手紙が届いたのです。
「会いたい、時間つくってくれないか。アンナが喜ぶと思う場所があるから一緒に行こうよ」と短い言葉で書かれていました。しかし日程を調整している最中に突然、父が入院。そのまま亡くなりました。
残念なことに、父と一緒にその場所を訪れることは叶いませんでした。
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