私が男性の性衝動に強く嫌悪感を抱くワケ
さらに、私はソーシャルワーカーとして働いていたのですが、職場での出来事が夫婦生活に直接影響を与えるようになりました。
●だれにも言えない悩みを聞く仕事
すべての画像を見る(全4枚)私が働いていたのは、精神障害の女性をケアする施設です。グループホームの運営にも携わり、心に傷を負った女性たちが日中通う場所をつくって、作業をしながら自分を取り戻す支援をしていました。
じつは、ここに通っていた患者さんのなかには性被害に合われた女性が多かったのです。親にも夫にもだれにも言えない女性たちの悩みや愚痴、ときには過去の被害体験を聞く、それが私の仕事でした。
今でも忘れられないのが、実の兄から性虐待を受けていたという女性のこと。すでに子育ても終え、60代に差しかかろうかという普通の主婦の方でした。すごく品のいい奥様という印象だったのですが、ある時、過去の被害体験を打ち明けてくださいました。そして「夫から求められることには全部応えなきゃ。こんな私を受け入れてくれるんだから。申し訳なくて。こんな汚い私を…」とぽろぽろ涙を流しながら、心の奥底にしまい込んでいた魂の叫びのようなものを目の当たりにしたときです。
私は「あなたが汚いなんて1ミリも思わない。そんなこと言う人は死んでしまえ!」と自分でもびっくりするほどの大きな声が出ました。抑えきれない怒りが込み上げてきたのです。その女性からは「あなたは怒ってくれるんだね、ありがとう。明日からも生きていけそう」と言われました。
●病気で不自由な生活を強いられた気持ちがシンクロする
私自身、幼い頃から1型糖尿病のせいで病院に通い続け、不自由な生活を強いられてきました。好きでこんな病気になったわけではないのに。治療のためとはいえ、我慢することが多かった人生。性被害にあった女性たちの苦しみと同じ土俵に上げて考えているわけではないのですが、理不尽な被害体験を聞いていると、自分の内側からこみ上げてくる怒りの感情が爆発しそうになることが多々あったのです。
こういった職場での出来事を、家でも夫に話すことがありました。夫は性被害に遭った女性の話を聞くたびに胸を痛め、話しながら怒り狂う私にも共感してくれました。男性がみんな動物みたいな性衝動にかられて好き勝手やっているわけじゃないことはわかっているのですが、どうしても私は興奮すると「男はさぁ」と主語を大きくして話してしまう癖があって。しゃべり終えた後に、夫との空気が重たくなってしまいました。
●夫婦生活への不満がたまった夫と大喧嘩に
夫は割と性欲が旺盛なほうで、夫婦生活は夫婦の関係維持にとっても大事だと考えていた様子。なのに現実は仕事に追われて、一緒に寝る時間すら取れず。妻である私は仕事の話とはいえ、男性の性衝動に対して否定的な考えをバンバンぶちまけてくるような状態。
ある日、ついに大喧嘩になってしまいました。「うちは子どももいないし、病気のこともあるからおいそれとつくれないので、もうしょうがないと思ってる。だからって、夫婦の時間に仕事の暗い話を持ち込むのはやめてくれないかな」と。
そして「今後、亜子が誘ってくれないかぎり俺からはしない」と強い口調で宣言されたのです。私はもうしなくていい現状に満足していたので、正直「面倒くさいな…」と思ってしまいました。「しなくたって、仲がよければいいじゃない」と反論をしてみても、夫はふてくされてしまうばかり。
そして、数日後、夫の書斎を掃除していたとき、見てはいけない秘密の箱をあけてしまいました。そのお話を次回したいと思います。