●人生後半戦ほどに感じる山の魅力

よく、登山を人生に例えて教訓とされることがありますが、たしかに山の魅力はときに、自分を哲学者にしてくれるような、寡黙な時間が心地よいようです。

乾杯する男女
無事に山をクリアして乾杯…!
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慎重に下山し怪我なく、1つ目の山をクリアし、類さんから注いでいただいたお酒のおいしかったことは言うまでもありませんが、同行のスタッフさんから、今回の山はかなりハードな部類になると聞き、自分の足腰がまだなんとか耐えられたことにホッとした「宝満山」となりました。この山に耐えられたのであれば、翌日挑戦する「両子山」は大丈夫だろう…と。

ところがその期待は見事に外れ、なんとも過酷な登山が待ち受けていました。つまりは、前々日に降った大雨の影響で、ぬかるんだ土が足を滑らせるため、道なき道を転ばぬように突き進むしかなかったのです。

渓流釣りで鍛えられている吉田類さんの判断力が唯一の頼り。

それまではお酒を知る神様と崇めていた類さんでしたが、このときを機に「山を知る神様」としても崇める存在となりました。

 

●登山は「自分の中の野生」を呼び起こす機会

山を登る男女
(撮影:藤川満)

あとでわかったことではありますが「百低山」と聞き、油断したのが大きな間違いであり、実際には百名山として知られるような人気の山であればそれなりに登山道ができているものの「百低山」と呼ばれる1500m以下の山では、逆に道がなく厳しいことがあるようです。

57歳にして、いかに日頃安全な道を歩き、守られていることに慣れた生活のせいで、自分が本来持っていたはずの野生としての判断力を失っていたかを痛感した登山となりました。

加えて、登山道で出逢う年配の方々の、なんと元気ではつらつとしておられることか。こちらがへとへとな状態で恐る恐る登る横を颯爽と駆け登るように追い抜いていく姿が忘れられません。

若いときよりも年を経てからの方が、山にハマる1つの理由として、失っていた自身の中に眠っている野生を呼び起こす喜びがあるかもしれません。

そして憧れの類さんは、とても人生を豊かに楽しく過ごされているお洒落な方で、山をきっかけにご縁ができたことに感謝。いつの日か「おんな吉田類」と呼ばれるような豊かな生き方をしたいと思った登山となりました。

 

◆川上麻衣子さんが出演する「にっぽん百低山(NHK総合1 午後0:20~午後0:45)の放送
6月21日:宝満山・福岡
6月28日:両子山・大分
の予定です。ぜひご覧ください。
※放送日時は変更になる場合もあります。

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