●手軽を上回るおいしさがあるから感動できる
すべての画像を見る(全2枚)SHIORIさんのレシピといえば、思わず「つくってみたい」と思うネーミングも印象的。「長生きカルボナーラ」「ご自愛フォー」「貴族のチャーハン」「悪戦苦闘しない蟹クリームコロッケ」などなど…。
「長生きカルボナーラ」は、“時間差で食べ始めることの多いお母さんが最後までおいしく食べられるカルボナーラをつくりたい”との想いから試作を重ね、10分たってもおいしさが続くレシピを誕生させたのだそう。
「私が紹介するレシピは、一生活者にとって現実的であることを重要視しています。家庭料理ってある程度味の想像がつくので、感動するレシピをつくるのって簡単ではないんです。それでも想像を超えたときに感動は生まれて、自分でも感動するほどのレシピがつくれるという自信は、必ずやその後の料理人生を支えてくれる。そう信じて、レシピづくりに向き合っています」
●おいしいものを食べて気持ちが安らぐのは、幸せが今目の前にちゃんとあるから
『おいしい仕事術』の冒頭は、“「おいしい」の意味を考えたことはありますか?”という問いかけから始まり、以下のように続きます。
「おいしい」は、足るを知るということ。
おいしいものを食べて気持ちがほっと安らぐのは、どこか遠くに求め続けている幸せが「今、目の前にちゃんとある」ということを心が認識して安心するがゆえ。
「あぁ、今日という一日を生きててよかった」
おいしいものを食べてそう思えるのは、たった4文字の「おいしい」という感情が今日の自分を全肯定し、優しく包み込んでくれるがゆえ。
それこそが、おいしいごはんが明日を生きる活力に繋がる証。
「おいしい」はいつだって生きる味方なのです。
「忙しい現代人には、時短料理というアプローチは確かに不可欠。私自身も、子育てしながらでもサッとおいしくつくれる時短レシピもご紹介することもありますが、コロナ禍を境に『簡単・手間なし・時短』ばかりがクローズアップされることに違和感が爆発しました。手間ひまかけた料理にはまた別のよさがあります。おいしさはもちろん、相手にも伝わるものがあるんですよね。
コロナ自粛期間中に、インスタグラムで無料ライブ配信でレシピを提案し続けたのも、そんな思いから。世の中が不安なときだからこそ家庭料理の底力を伝えたかったんです。その結果、たくさんの人に喜んでいただけました。“簡単・時短”だけでは解決しなかった料理のストレスが、つくる喜び、つくる楽しみ、料理が持つ本質的なやりがいに触れることでやわらいだのだと思います」
最近は、レッスンで取り上げたちらし寿司で、和食のもつ華やかさに圧倒されたというSHIORIさん。「食べ疲れないし、ハレのごちそうとしても、日常食としても楽しめる。こうした日本の食文化を後世に伝えていきたい」とも語ってくれました。
『おいしい仕事術』(小学館刊)は、SHIORIさんが料理で幸せを届け続けて見つけた「仕事術」を惜しみなくまとめた1冊。仕事に、暮らしに、生きるうえで役に立つメッセージが満載です。