リビングとダイニングは家族が多くの時間を過ごす場所。それだけに、床面積がコンパクトな家を建てるにしても、なんとか開放感と広がりをもたせたいものです。これを実現する間取りの工夫や窓のつくり方を、一級建築士の新井崇文さんが解説。自身の設計した事例を交えて、8つのポイントを紹介します。
すべての画像を見る(全20枚)1.リビングとダイニングを一体にする
リビングとダイニングを、それぞれ分けてつくれば「家族がそれぞれ違った過ごし方をしやすい」「来客に対応しやすい」などのメリットがあります。ただし、床面積がコンパクトな家を建てる場合、それぞれが手狭で窮屈な空間になってしまう恐れも。
一方、リビングとダイニングをなるべく一体的な連続した間取りにすれば、広がりと開放感が確保しやすくなります。このお宅では、リビングとダイニングを一体の空間にして、家具配置だけでスペースの使い方を分ける仕組みにしました。
別のお宅では、ひとつの空間にあるリビング(手前)とダイニング(奥)が、斜めの位置関係で接するように配置してみました。境界がなんとなくあいまいで、やわらかく感じられます。
リビングとダイニングのそれぞれの異なる雰囲気は共存しつつも、空間としてはキッチンも含めた一体感のあるものに。そのうえ、広がり感も出ています。
2.リビング階段にして、階段スペースまで取り込む
リビングとダイニングに広がりと開放感をもたせるためには「なるべく多くの空間を、リビングとダイニングにくっつけてみる」という発想もありです。
たとえば階段スペース。上下階を移動するためのスペースですが、そこを通らない多くの時間は、「使ってない空間」となります。それならば、リビングとダイニングにくっつけてしまうような間取りにしてしまうのです。
このケースでは、階段スペースがリビングやダイニングの一部となり、広く感じられます。
別の事例を。このお宅では、階段までもが、まるで「リビングとダイニングの延長」になってるかのような間取りにしています。
そんな階段の途中に、つくりつけの本棚を設置してみました。リビングとダイニングの一角にある読書スペースのようにも使えます。
実際、ホームパーティで友人家族が集うときにも、子どもたちがこの階段に座って本を読んだり、ゲームをしたり。オーナーもゲストも、楽しく使っているそうです。
3.ワークスペースと一体にする
昨今はリモートワークやリモート授業も多くなり、家にワークスペースを設けるニーズがより高まっています。そうしたスペースもリビングやダイニングと連続した間取りにすると、広がりと開放感にひと役買います。
このお宅は、リビングとダイニング、そして、ワークスペースがオープンにつながった例。
一部に壁を使って、さりげなくワークスペースの領域を分けました。コミュニケーションのジャマにはならず、でも、気持ち的には仕事モードに切り替えできるワークスペースにしたい…。そんなシチュエーションに、ぴったりな分け方です。
一方、こちらのお宅では、ほぼ個室のようにワークスペースをプランしました。その代わり、大きなガラスの間仕切りをつけて、光と視線が抜ける仕掛けに。
別々の部屋でも、中がよく見えるだけで、リビングとダイニングとも一体になっているような錯覚に。ワークスペース室内までも、取り込んでしまったかのようです。
ちなみに、個室のようにしたのは、ウェブ会議などをしやすくするため。カメラに映る背景や、リビングダイニングにいる家族の声を気にせず、やりとりができます。