●学ぶことへのモチベーションにつながる3つの感情を誘発してくれる

また、子どもたちのモチベーションの高まりを実感することも数多くあったそう。

「普段は言い聞かせても英単語を覚えようとしないのに、マイクラで必要な英単語は教えてあげるとみんなメモを取り始めるんです。自ら知りたいとなったことには一生懸命になるんですよね。最初はマイクラで金閣寺を作成したのですが、『ネットの画像では細部までわからないから』と、実際に金閣寺に足を運んで写真を撮影してくる子もいました。基本的に、子どもが夢中になって動き出すきっかけになるのって、“調べたい”“つくりたい”“試したい”の3つの感情だと思うんです。マイクラを使っての授業は、その3つの感情を誘発するのに本当に適しているんだなと感じました」

そもそも、何も困ることがないほど満たされた国で生まれ、無数のエンターテイメントが用意されている時代で生きてるいまの子どもたちは、何事においてもモチベーションが上がりにくくなっていると正頭先生はいいます。

「『YouTubeのこのチャンネルが見られなかったら他のチャンネルを見ればいいや』というのと同じ感覚で、何でもすぐに切り替えられちゃうんですよね。諦めずに固執する必要がないから、モチベーションが落ちるスピードも異常に速い。そんななかで勉強へのモチベーションを持ち続けさせようと思ったら、もはや子どもたちの興味関心のあるところから入っていく方法しかないんですよ。そこでつまずいたり困惑したりすることに直面して、初めて調べたいつくりたい試したい=勉強したいという感情が生まれるのかなと。だからマイクラのようなコンテンツで、『勉強っておもしろい』と前向きに捉えられるスパイラルをつくっていくと、子どもたちはもっと学びというものを楽しんでいけるのではないでしょうか」

●マイクラは“エディテイメント”。そこを理解する学校が増えていくのが理想

授業中
正頭先生がICT科で授業する様子
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こうした特性を持つマイクラは、いわゆる“エディテイメント”のひとつだと正頭先生は言います。

「私はいま、娯楽であるゲームを教育に活用する“エディテイメント”という分野を専門として活動しているのですが、マイクラはすぐれたエデュテイメントだと思っています。にも関わらず、まだマイクラを授業に取り入れる学校が全国的に少ないのは、大人世代の“ゲーム”というものに対するマインドが昔と変わっていないから。いまはもう何万とゲームがあって、マイクラのように教育的にいいゲームもいっぱい出てきているのに、『ゲームは単なるエンタメで勉強ではない』という固定観念にとらわれて手を出せずにいるんですよね」

しかし、そんな理由でメリットの多いゲーム学習を授業から排除してしまうのはもったいないこと。

「たとえばマイクラはモノづくりを通して創造力もつきますし、プログラミング能力を鍛えることにも役立ちます。立命館小学校では現在、プログラミングを学ぶICT科という授業でマイクラを取り入れているのですが、デジタル空間の中で何でも自由にクリエイトできるマイクラはプログラミングと非常に相性がいいですね。子どもたちは学んでる自覚もなくプログラミングを学べているのでは。こうした部分を理解して、正しく取り入れる学校が増えていくのが理想だと思います」