●『私はなにをしているんだろう』と思ったこともあった

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――その居酒屋でフランス人のロマンさんと知り合い、結婚することに。

「35歳でした。ロマンと結婚したことで、子どもも授かりたい気持ちも芽生えて。となると、焦って渡仏することもないかなと。さらにそんな中でも、フランスと料理は諦めたくないと考えて行きついたのが、家事代行の仕事でした。私が応募したのは家事のマッチングサービスの会社だったのですが、在日フランス人のご家庭から声がかかれば、働きながらフランスの家庭料理やフランス文化への学びがあるかもしれない、と思ったんです」

笑顔

――とはいえ、現実は厳しく、志麻さんの思い通りにはならなかったと言います。

「残念ながらフランス人家庭からのオファーはゼロ(笑)。最初期の依頼は、半分以上がお掃除でした。家事代行サービスなので当たり前なのですが、自分の中にはまだ料理人のプライドが残っていたのでしょうか。トイレ掃除をしながら『私は、一体なにをしているんだろう』と思っていました。親にも友人にも、お店を辞めたことは言えていなかったですし。でも、そのうちに料理の依頼がぽつぽつときて。つくりおき料理の中にフレンチのお総菜を3~4品入れておいたら、『次もお願いします』と繋がっていった感じです。

調理中
『à table SHIMA vol.03 冬号』より

そして私自身も、そのときに気づきを得ました。調理人時代は、整った環境や厳選された食材で、レストランの料理を完璧にしあげていくのですが、家政婦としてフレンチをつくる場合は、依頼されるご家庭によって、台所の火加減も、料理の食材も、まるで違います。その中で、『このおうちには、ない食材だけど、これで代用しよう』、『これがつくれたから、あの料理もつくれるな』と、どんどんイメージが湧いてきて。

たとえばニンジンを使ったお総菜・キャロットラぺも、日本人は買って食べるものだと、自分が勝手に思い込んでいたもの。でも気取らず、気負わず、日本の家のキッチンでつくれるし、お伺いした先で『子どもたちが喜んで食べていました!』という声もいただいて。いろんなご家庭でフランス料理のお総菜をつくるうちに『私がみんなに伝えたかった、リアルなフランス料理はこれだ』、『ずっとやりたかった夢が、今、叶っているじゃない!』という思いが強まっていきました」。

 

●フランスの料理が持つ温かさを、私を通じて感じて欲しい

志麻さん

――今でも「料理家ではなく家政婦の肩書を大切にしている」という志麻さん。

「ありがたいことに、こうしてレシピ本やライフスタイル本を出させていただけるようになった今は、料理家と呼ばれることも多いのですが、私の原点は、フランス料理の持つ温かさ、食事が持つ豊かな時間ををリアルに伝えていける家政婦。だから肩書もこのままで、とお願いしています。私のレシピや著作からも、そういったフランス料理のもつ世界に触れていただけたら嬉しいですね」

 

そんな志麻さんの『志麻さんのベストおかず 料理のきほん編』では、「これだけは覚えておいてほしい」という志麻流“おいしい”をつくる20のルールを、レシピと一緒に丁寧に紹介。『à table SHIMA vol.03 冬号』でも、タサン家のごちそうレシピをたっぷり掲載しています。冬を楽しむ特集が盛りだくさん。ぜひどちらもチェックしてみてくださいね。

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