●「免疫系の臓器」の大きさが変わった!
すべての画像を見る(全5枚)「胸腺」とは聞きなれない器官ですが、これは免疫について重要な役割を果たしている臓器。イメージしやすくするためにご紹介すると、フランス料理だと「リードボー」、焼き肉だと「シビレ」と呼ばれる部位のことです。
具体的には「Tリンパ球」という免疫に関係する細胞をつくる臓器で、「宇宙飛行士が無重力状態で生活すると、Tリンパ球の数が減る」こともこれまでの実験で知られていました。
ここで、「重力と免疫はなんらかの関係があるのではないか?」という推論が成り立つわけですが、それを確認するための実験がこの「宇宙マウス実験」だったわけです。
結果は見事、この推論を強化するもので、無重力で生活したマウスの胸腺は、重力のある状態で生活したマウスの胸腺よりも小さく、軽くなっていたのです(ただし、胸腺の大きさと重力が単純に比例するかどうかはまだ研究の余地があるそうです)。
●月や火星に人が行く時代に役立てるためには?
こういった実験が「いったいなんの役に立つのか?」と思われるかもしれません。しかし、現在、アメリカは火星への有人探査を目指しており、そのために月を周回する中継基地(ゲートウェイ)を建築しようとしています(これには日本のJAXAも参加しています)。
そうしたとき、長期間、宇宙空間で人間が生活しても免疫を弱めない方法をどうやってつくれるかを考えなくてはいけなくなります。
今現在、それに対する解答はまだないのです。しかし、今回のような実験を積み重ねることできっとなにかが見えてくるでしょう。もしかしたら子どもたちが大人になったときに、その解決方法を見つけてくれるかもしれません。
ちなみに秋山博士によれば、「基本的に科学者は誰かと同じことをやるのは好きではなくて、人と違うことがしたいというのはありますね。目立ちたがりです」とのこと。目立つことが好きな子は科学者に向いているかもしれませんよ!
このほかにも『大好きなことを研究する科学者になろう!![宇宙編]』では、理化学研究所の博士たちによる、宇宙にまつわる貴重なお話が語られています。ぜひチェックしてみてくださいね。
大好きなことを研究する科学者になろう!![宇宙編]
疑問と不思議だらけの宇宙の謎を、日本で唯一の自然科学の総合研究所である理化学研究所(略称、理研)の5人の博士が、最先端の宇宙研究のおもしろさを解説!