●夜が深まったころ、現れたのは…

とん……とん……。

はっと目を覚まします。音のするほうを見ると、いました。ゴーストが。

ゴーストがゆっくりと歩いています。わたしたちは動けなくなり、じっと身体を硬くしました。ゴーストは廊下の先から、ゆっくりとこちらに向かってきます。そして、わたしたちの目の前にきました。

ゴーストは母の顔をじっと見ています。なにか言いたげな姿です。そのとき、母は思いがけない行動に出ました。ゴーストの白い布をめくったのです。ゴーストの顔を見て、母は声をあげました。

「アオサギ……!」

それは母の親友であるアオサギさんでした。しかし、おかしいのです。アオサギさんは死んでいません。最近も母はアオサギさんとよく電話しているのです。つまり、これはアオサギさんの生き霊なのでした。アオサギさんの強い思いが、生き霊となって現れたのです。

●アオサギさんが生霊となって現れた理由

アオサギさんの生き霊は言います。

「引っ越したと聞いたとき……特にそれ以上聞かずに軽く流したけれど……もっと聞いてほしかったんじゃないかと思って……場所とか決め手とか……でもあとから聞くにもタイミングが……」

ああ、わかる。そういうことってある。そう思いながらアオサギさんのことばを聞いていました。

母は首を大きく横に振ります。

「ううん、そんなこと気にするわけないじゃない。あなたの足音だって気にしてなかったんだから」

母はそう言ってアオサギさんを強く抱きしめます。そしてやさしく言いました。

「さぁ、いっしょに歌いましょう」

ふたりは大きな声で歌います。そういえば、母は父と出会う前は、アオサギさんとミュージカルごっこをしていたと聞きます。歌い終わると同時に、アオサギさんはすぅっと消えました。

それからというもの、わたしはなにか不安なことがあったら、歌を歌うようになりました。まだ小声ですけど。

【見出し】編集部より

なぜ質問者さんがゴーストになってしまうのでしょうか。たしかに本人へ確認するよりも、気にしないほうがいいと思いますが……。

こういった心配は、誰しも少なからずあるものですよね。話し相手はアオサギさんの言動よりも、自分の言動を気にしているかもしれません。きっとつぎに会ったときに普通に接するのが、一番なんだと思います。

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