介護や住まいのことなど、親が高齢になるにつれて出てくるさまざまな問題。早いうちに考えておかなければならないことも、たくさんあります。ここでは、自身も最近「実家の名義変更」をしたというライフオーガナイザーの高田舞子さんに、実際に感じたことや準備しておくべきことを教えてもらいました。
40代、高齢になった親問題。実家の名義変更で気づいたこと
すべての画像を見る(全3枚)40代も後半となり、周りでも高齢となった親問題がなにかしら浮上しています。
・一緒に住むのか施設に入居するのか
・公正証書や成年後見人制度は必要なのか
・生前贈与は損なのか得なのか
・実家の片づけ
・終活のはじめ方、エンディングノート
2年前、突然の脳出血で右半身麻痺となった母。利き手が使えないので、家事どころか排泄や入浴、食事など日々の暮らしは不自由だらけ。介護サービスを駆使しながらひとり暮らしをなんとか続けていますが、この夏に介護度も不安度も増し、施設の入居を目指すことになりました。
具体的に進めていく過程で、細かな問題が浮上。親が高齢となり、介護や住まいの問題を感じ始めた皆さんに、私が実際に体験して感じたことをご紹介できればと思います。
●名義変更は、本人と意思疎通ができるうちに!
施設入居を考え始めたことで、改めて預貯金を確認。母の寿命はわからないため、資金が豊かとは言い難いものの、いざとなれば実家のマンションを売却するなり賃貸に出せばいいと思っていました。そんな私に、不動産業の友人から「待った!」がかかりました。「お母さん名義だと売れなくなる可能性もある」「今のうちに名義変更を」と言われたのです。
不動産売却は、名義本人の意思が確認できることが必須。1年後2年後、母の状態がどう変化するかはわかりません。すでに短期記憶が弱くなってきている母。かみ合わない会話も増え、近い将来、認知症になっている可能性もゼロではありません。
もし名義人が意思疎通のできない状態になったら…? 家族の意思だけでその資産を動かすことはできなくなるとのこと。
認知能力が衰えても、寿命は未知数。生きている限り、住居費や施設費、生活費はかかります。それを息子だから娘だからと親の資産に勝手に手をつけることはできないのです。
●不要な話し合いや手続きが少しでも減るよう、姉弟の共有名義に変更
そこで弟と協議した結果、私たちの判断で資産を動かせる準備は必要だと同意し、母も賛同したので名義変更をすることにしました。
新しい名義は姉弟共に50%ずつの共有名義に。なぜ共有かというと、仮に弟のみの名義にして万が一事故などよからぬことが起こった場合、母のマンションが弟の妻名義になってしまうからです。逆もしかり、わたしになにかあった場合はわたしの夫が相続することになります。
家族の仲が悪いわけではありませんし、名義がどこにあれ母の生活にあてがうことはお互いの夫婦とも承知していますが、不要な話し合いや手続きが少しでも軽減するように共有名義を選びました。
●「まだ先の話」と軽く捉えないことが大切
ちなみに年間110万円までは贈与とみなされず、非課税で親のお金を使えます。名義変更したところで、母の家は母の持ち物。万が一指摘されても説明ができる範囲で、固定資産税や管理費などの諸経費は母の預貯金から出す予定です。
生前贈与は多くの税金がかかりますが、2500万円までは非課税。不動産、預貯金、投資などの運用益、あわせて2500万円までなら、生前贈与も終活のひとつとして大きな選択肢。
たとえそれを超える金額だとしても、税金を支払っても名義変更をするか、認知症の親が死亡するまで資産を据え置いておくかの判断は、家庭状況によって様々です。
大事なのは、「まだ先の話」と軽く捉えないこと。自分たち家族の状況を把握すること。そして将来をどう考えるのか。親が元気なうちに、家族間の意思共有をしておくのをおすすめします。