●身体表現は、互いを理解するコミュニケーションツール

今年1月には神戸市で制作滞在をし、脳波を測定する機器を装着し、ダンス中の脳波をモニターへ映し出すパフォーマンスを行いました。測定した中野信子さんによると、森山さんの脳波は「外部との境界がない」のだそう。

「集中している、リラックスしている、緊張している…など、出てくる脳波によってその人の状態やスタンスがわかるのが、あの装置の特徴なんですよね。脳波のパターンのひとつにガンマ波というものがあってこれは人と関わっているときや、世界とつながろうとしているときに出る脳波だそうなんです。僕はそのガンマ波が優位に立っているらしくて。それを聞いたときに、僕としてはなんとなく腑に落ちたんです」

それは、これまでダンスという身体表現を通じて、世界とつながってきた森山さんだからこそ、実感できたことだったそう。

「身体表現というのは、言葉で交わすコミュニケーションよりも、もっと直感的にお互いを理解していけるツールなんです。頭だけで考えるのではなく、体で反応していくことで、より理解が深まる。これは僕だけじゃないと思いますが、体を動かすとすっきりしたり、頭がクリアになったりする感覚ってありますよね。身体と感覚って、深くつながっている部分が大きいんです」

実際に森山さん自身が体を使って表現しているときも、なにか別のものと接続しているような感覚を味わっているのだそう。

「日本の芸能文化って、もともとは神様に向けて行われるものが起源のひとつといわれています。たとえば、お祭りの前の神主さんによる神事などがそうです。だから現在でも、日本の芸能では、演劇、ダンス、音楽など、いずれにしても自分の身体を依り代というか、いわば器のようにして、別のものを“降ろす”感覚で行う傾向が強い。俳優がよく、“役が降りる”という表現をしますが、それも同じだと思います。僕自身は踊っているときや、芝居をしているときだけじゃなく、普段の生き方において、環境や周囲の人によって動かされているという感覚が強い。それが僕の表現や生活のベースにあります。だから、ガンマ波が強いと言われたときも、そりゃそうだろうな、という気持ちでした(笑)」

立つ男性横
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なにを尋ねても、どんな言葉を選べば伝わるのかを真剣に考えながら答えてくれた森山さん。ESSE11月号では、普段の暮らしのなかで、感性をみがくための秘訣についても教わりました。ESSE onlineには未掲載のカットもあるので、ぜひ誌面をチェックしてみてください。