●いざ穴を掘り始めるマシューたち。そのとき…!?
「さぁ、みんなスコップをかまえるんだ。歌をうたいながら穴を掘ろう」
ラルフがそう言うと、ターンテーブルが回され、軽快な音楽が流れてきます。みんなその音楽にあわせて歌をうたいだしました。
♪アルの家に穴を掘れ
スコップ片手に土をかきだせ
疲れたらコーラを飲め
バーベキューのコンロもあるぜ
アルの家に穴を掘れ
子どものころ読んだ『少年アシベ』
あの気持ちをいま思い出せ
やがてやってくる人類の夕べ
そこまで歌ったとき、音がぷつっと止まりました。マシューがターンテーブルを止めたのです。
「おい、やめろ、こんなばかげたことは」
みんながぽかんとマシューの顔を見ます。今日はアルの家に穴を掘る日なのになにを言っているのだろうと。
「でも、穴を掘らないっていうんなら、いったいなにをやるんだ」
「みんなで流しそうめんをやろう。タワマンの屋上から、地上に向かって」
マシューの提案にみんながざわつきます。やがて小声で話し合いが行われ、ジェシーがみんなを代表して言いました。
「それって最高」
そうして、ラルフの車に乗ってタワマンに移動し、屋上から地上に向けて流しそうめんのレールを設置しました。マシューは地上でそうめんが流れてくるのを待ちます。いつまでたっても流れてきませんが、いつくるかわからないので、ずっとレールを注視しています。
マシューはいつの間にか明るい顔になっていました。さっきまでずっと暗い顔だったのに、うそのようです。
そのとき、やっとそうめんが流れてきました。マシューは箸でキャッチして、つゆをつけて口に運びます。
「ああ、そうめんってつるつるしていておいしい」
マシューは思いました。今日は落とし穴を掘る気分ではなかったのです。タワマンの屋上からそうめんを流す日だったのです。
【編集部より】
ひとの家に勝手に落とし穴を掘ったらいけません。
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