●リニューアルのカギは…「古さ」!?

「今回のリニューアルの予算は100億円。金額だけ聞くと高額に思われるかもしれませんが、これはレジャー業界の中ではかなり少ない金額なんです。そんな予算内で最大限にできることを会社全体で模索しました」

そこで、まずは西武園ゆうえんちの『古い』という既存のイメージを逆手に取ることに。

入り口
以前の西武園ゆうえんちの入り口(写真提供/西武園ゆうえんち)
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「元々は3つあった入園口を、あえて夕日の丘商店街に繋がる1つにまとめました。これにより、お客さまにはまず『夕日の丘商店街』の昭和の世界観に浸っていただけるので、“古い”園内のアトラクションを『価値のあるアンティークなアトラクション』として捉えてもらうことが目的なんです」

●緻密な計算の上のリニューアル。でも、予想外の反響も…

そうした策が功を奏し、来場者数はリニューアル直後からぐっと増えました。

「以前は家族連れのお客さまが全体の約8割を占めていましたが、現在は半分ほどがZ世代のお客さまに。とくに平成以降に生まれたお客さまは、アニメや映画で描かれるような人情味あふれる昭和のイメージが強いので、その世界観にどっぷりハマれるんです」

こうして練りに練ったリニューアルは大成功。しかし、西澤さんたちにも予想外のうれしい反響もあったとか。

昭和風写真
昭和風コーデでこんな“映え写真”が撮れちゃいます!

「まさに今日のY永さんのように、昭和風のファッションで来場してくださるお客さまの多さには驚きました。日本人は控えめな国民性だと思っていたので、自分から入り込んで遊びにきていただけたことはうれしかったです」

●昭和の街並み再現ではなく昭和の“熱気”を再現

夕日の丘商店街のお店
夕日の丘商店街の街並み

「じつは、夕日の丘商店街は1960年代の昭和の街並みを完全再現しているわけではなく、お客さま、とくにメインターゲットであるZ世代方々の頭の中にある1960年代の昭和の街並みを再現しています。さらに昭和の街並み再現が今回のリニューアルの肝ではございません。そこに息づく人々の熱気や活気を再現することこそが西武園ゆうえんちが持つ唯一無二の体験に繋がっています」

“再現”といっても、その方法はさまざま。しかし、しっかりとお客さんのニーズを捉えているからこそ、来園者数が伸び続けているわけです。では、その世界観をより楽しむためには、どうすればいいのでしょうか…?

夕日の丘商店街の住人たち
夕日の丘商店街の住人たち

「住人たちは気さくなので、ご近所さんのように接していただけるとより楽しめると思います。仲良くなると、ニックネームを付けてくれたり、覚えてくれたりするんですよ。住人に会うために、週に何度も遊びに来てくださるお客さまもいます。この人と人とのやり取りこそが、『心あたたまる幸福感に包まれる世界』に繋がっているんです。ショーも夕日の丘商店街の住人になった気持ちで参加していただけるとうれしいですね」