ここのところ、有名人の訃報や戦争による犠牲者などのニュースを目にすることが増え、自分自身も不安定になってしまう、という声が聞かれます。 もし、そういった気持ちを抱えてしまったときはどうすればいいのでしょうか? うつ専門メンタルコーチで、公認心理師の川本義巳さんにすぐできることを教えてもらいました。

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戦争のニュースを見ると不安な気持ちに…。心を病まないためにできること

死にたいほどメンタルが不安定になってしまうとき…

スマホを見て落ち込む女性
訃報を耳にする機会が増えると、どうしても落ち込んでしまいがちに(※写真はイメージです。以下同)
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「人の生死についてこれほどにまで意識したことがあっただろうか?」最近そう感じることが増えました。とくにこの3年ほどはその傾向が強くなってきています。これは私だけでなく、多くの方も同じような感覚をもっているのではないでしょうか?

●コロナや戦争…次々と押し寄せる不安なこと

その理由としてはやはり新型コロナウイルス。未だに終わることのないこのウイルスとの戦いでは連日メディアで感染者数や死者数が報告されます。有名人が感染して亡くなったという訃報を目にしたのも一度や二度ではありません。

そして今年に入ってからのロシアによるウクライナ侵攻。こちらも連日ニュースで被害状況と共に多くの死者が出ていることを知らされています。

さらに直近では大きな事故があったり、有名人の自死による訃報があったりと、すべてのことがこの時期に連鎖しているのではないか?とさえ思いたくなるような状況です。

今のこの状況が人のメンタルに与える影響は決して小さくないと思いますし、これまでそれほど死について意識していなかった人でも、日常的にあふれた情報により、死を身近に感じてしまうことでしょう。

 

●「死にたい」と思っているときの心の状態とは…?

私は仕事上で「死にたい」という言葉を聞くことがあります。それほど多いほうではないとは思いますが、それでも目の前の人から直接その言葉を聞くことは、やはり衝撃的であることは間違いないです。

とくにうつ状態にある人のなかには「希死念慮」という形で「死にたい」と考えてしまうことが起こったりします。この希死念慮については「うつがそう思わせている」と表現されることも多いのですが、いずれにせよそのことを四六時中考え続けてしまうことは、あまりよいこととは思えません。

じつは私もうつ病のときに「死にたい」と思うことが何度かありました。正確には「死にたい」ではなく「消えてなくなりたい」という感じでした。

 

また、こういうこともありました。地下鉄の駅のホームに立っていたときです。なぜかわからないのですが、ホームに降りたくなったんですね。我に返って後ろに下がったという体験をしました。

このことを何名かのうつ経験者の方とお話をしたことがあるのですが、みなさん「同じだ」と言っていました。「死にたい」よりも「消えたい」だったし、ホームに降りたくなったことがあると。

メンタルが不安定な状態のときは、このように衝動的に行動してしまいそうになることがあります。これは「現状から離れたい」という意識からもあるとは思いますが、自分の判断基準がちょっとおかしくなっていることもあるように感じます。この状態で「死」について考える機会が増えるのは、あまり好ましくはありません。でも今の世の中の状況ではそれは避けられそうにないです。

ではもし自分自身が「死にたい」「消えたい」と感じたり、周りからそういう言葉を聞かされたり、今のようにテレビやネットで情報を見聞きしてしまって、それが原因でメンタル不調になってしまったときはどうすればいいでしょうか。