空気も日当たりもよくなかった都会から、目の前に空と丘陵の緑地が広がるマンションを購入し、リノベーションした事例です。和室をなくし、日当たりのいいLDKを実現。一緒に暮らすネコたちが、気持ちよくひなたぼっこする場所ができました。扉はなくし、壁で区切られていたキッチンとリビングダイニングを自由に行き来できるように。人にもネコにも心地よいマンションリノベです。
すべての画像を見る(全17枚)自然が身近な住まいで、2匹のネコたちと快適な暮らしを
●この家のプロフィール
- ・Sさんの家 神奈川県
・家族構成:本人40代 ネコ:チロ12歳 ブルーナ10歳 インコ:かぐら4歳
・専有面積:77㎡ 築年数:35年(1987年築)
・工事費:1000万円(税込み・設計料別)
・設計:大内久美子(Small Design Studio)
Sさんが住むのは、南向きのひな壇状で、目の前に空と丘陵の緑地が広がるマンション。
「以前の家は都内の幹線道路沿いで、空気も日当たりもよくありませんでした。外の音もうるさくて、ネコたちがかわいそうになってきて。よりよい環境を求めて、郊外暮らしを選びました」
LDKの前にはゆったりとしたルーフバルコニーがあり、ここならネコたちが外に出られるかな、とも考えたそうです。室内にはこれといってネコを意識した工夫は見当たりません。
リノベーションを依頼したのは、雑誌で施工事例を見て、快適かつ新鮮な設計に魅力を感じたという建築家・大内久美子さん。最初に確認し合ったのは、ネコのための工夫をどうするか。
大内さん宅にもネコがいますが、キャットウォークのような仕掛けは皆無だそう。「なければないで、ネコはしたいことを空間の中でするようになるんですよね」(大内さん)。「経験上、なにかつくってもネコは対応してくれない気がして(笑)。ネコたちはともにおとなしい性格。10歳超という年齢も関係あるかもしれません」とSさん。
ネコへの向き合い方がはっきりしてから提案されたのは、人もネコも動きやすい、オープン過ぎずクローズでもなく曖昧な空間が連続する住まい。大きなキッチンを軸に回遊でき、扉を最小限にして開放感を向上。さらに構造上撤去できない壁は、あえて厚みを生かして建物の持つ力強さを表現したのも特徴です。
取材中、しばらくするとネコたちは隠れていた寝室から徐々に姿を現し、日当たりのいい場所でひなたぼっこ。「ネコたちはこの家に来ても以前とあまり変わらないのですが、私は外出がかなり減りました。コロナ禍で在宅勤務だった期間は、快適すぎてつい家やネコのことをやりたくなってしまい、仕事の効率がいまひとつに(笑)」。
安全面が気になり、ネコたちをルーフバルコニーに出すのは実現していないそうですが、自然が身近な住まいで、2匹と1羽とともに快適に暮らすSさんです。