睡眠不足から体調不良をひき起こす、「睡眠負債」が話題。たかが寝不足とあなどっていると、深刻な病気につながる危険がひそんでいます。

「うつ、ストレス、がん、アルツハイマー、高血圧、肥満、学力低下、集中力低下など、さまざまな症状を呼び起こす可能性があります」と言うのは、睡眠評価研究機構代表で、医学博士の白川修一郎先生。
睡眠負債の危険性と改善策について詳しく教えてもらいました。

睡眠負債
睡眠不足が深刻な病気を招くことも…
すべての画像を見る(全5枚)

本当は怖い睡眠負債。ため込む前に、こまめに返済するのが鉄則!

睡眠負債の返済

「睡眠負債は、眠りの借金です。お金と同様、負債を重ねるとさまざまな不調を招くばかりか、命をおびやかす危険さえあります」と、白川先生。

病気だけでなく、過去24時間で4時間以下の睡眠しかとっていないと、事故を起こす危険率が11・5倍に増えるという研究結果もあるそう。

毎日ちゃんと眠っているから自分は大丈夫、と思っている人も要注意。

「日本人の4割が睡眠時間6時間未満といわれ、睡眠の短さは世界でもトップクラスなんです」

世界の睡眠時間
OECD加盟国の睡眠時間の違い OECD:SocietyatGlance,2009より改変(睡眠改善委員会)

日本人の睡眠時間は、韓国に次いで短いとされています。1960年に比べ、1時間も短くなっているという調査結果も。

「成人に必要な睡眠は7時間程度とされ、6時間睡眠では、1か月で30時間の負債を抱えることに。睡眠負債は、一括返済ができません。つまり、寝だめは意味がないのです。毎日こまめに返すしか返済法がないので、ため込む前に生活習慣を見直すことが肝心です」

負債は早く返済し、いつの間にか身についた“ためグセ”も改善をしましょう。

●あなたも睡眠負債を抱えている!?睡眠負債度チェック

睡眠負債ふくろう

睡眠負債は、さまざまな症状で現れています。私は大丈夫、と過信せず、セルフチェックで負債度を確認して、早めに対処しましょう。

・朝起きたとき、すっきりしない

・目覚ましで起きられない

・通勤通学の車内でうつらうつらしてしまう

・集中力がなくなる

・イライラしやすい

・太りやすくなった

・疲れがとれない

・1時間以上夜更かしすることが多い

・夜中に目が覚めることがある

・寝つきが悪い

あなたはいくつあてはまりましたか?

・0~3つの人…ちゃんと睡眠がとれていて負債はなさそうです。油断せずに今の睡眠習慣をキープしましょう。

・4~6つの人…睡眠負債がじわじわたまっています。生活習慣を見直して、これ以上負債を増やさない努力を。

・7つ以上の人…大きな負債をかかえています! すでに生活や健康に支障をきたしている可能性があり、一刻も早く返済してください。

睡眠負債を返済するための暮らし方

お風呂リラックス

ためてしまった睡眠負債を返すには、朝起きてから眠りにつくまで、日々の習慣を見直すことが大切。快眠を得る暮らし方のコツを身につければ、早く返済できます!

寝だめは意味がないので、睡眠負債はこまめに返済するのが鉄則。毎日30分以上、可能なら1時間は早く眠りにつき、休日はいつもより2時間多く眠ることを目標にしましょう。

ここでは日中にできる、睡眠負債返済をするための習慣をご紹介します。

●午前中に日光を浴び、体内時計をリセット

規則正しい睡眠、快眠に大きく作用するのが、体内時計。じつは、24時間ぴったりではなく、少しずつずれています。毎日リセットする役目を果たすのが、朝日。目覚めたら、窓ぎわからでもいいので、10分間日光を浴びましょう。

●食事は1日3回、同じ時間にとる

体内時計を整えるために、朝日を浴びるのと同じように大切なのが食事です。1日3回、バランスのよい食事を同じ時間にとることで、代謝のリズムが整い、眠りのために重要な体温のメリハリが生まれます。

●日中は適度に体を動かす

眠りの質が落ちる原因のひとつが、日中の運動不足。週3日は運動する日をつくるのが理想ですが、日常生活でなるべく歩いたり、家事などで意識して体を動かすだけでも違います。適度に体を動かす習慣で、夜はぐっすり。

●運動は夕方に行って。散歩でもOK

朝は脳も筋肉も十分に動いていない状態。早起きして運動すると、睡眠不足を招くうえ、体に大きな負担が。運動は、体温がいちばん高い夕方に行うと夜に向かって体温が下がり、快眠につながります。散歩もおすすめです。