翌朝になり起きれば、私の物音で今起きた“彼”と目が合った。日常的な朝の光景に私がいるのに驚いて動揺したように見えた。
しかしその動揺もほんの数秒で落ち着き、「今日の夜になれば、帰ってくるからね」と伝えれば、返事の代わりにグゥ~と伸びてくれた。本当になんてかしこいのか。
この日は土曜日で、両親に加え兄も家にいるし犬は大丈夫だろう。朝は河川敷、夕方は町内をのんびりと散歩をした。
それ以外の時間はごろごろしたりと脱力した一日を過ごした。そして“彼”はユニークなので、たくさん笑わせてくれた。
視線を感じるなと思ったら、ひょっこり覗かれていたりね。
夜になり親戚家族が帰ってきたら、耳がピンと立ちあがり、顔に喜びが溢れていた。おばさんの両手にほほを包まれたら、安堵したように表情を緩ませた。二日間で一番いい表情だった。楽しい時間をありがとう、また遊んでね。
●inubot 小噺
先日、母が畑で剪定した柿の木を燃やしていて、その焚き火で焼きイモをつくってくれた。犬も干しイモのおやつを好んだり大好物なので、喜んで食べていた。焚き火の暖かさと焼き芋の甘さが沁みた。
真冬に突入し、散歩に行くのにも気合がいる。とくに朝だ。もしも犬がいなかったら霜が降りた道を30分も40分も歩いていないと思う。そしたら冬の朝日の眩さにも気づかないままだった。
この連載が本『inubot回覧板』(扶桑社刊)になりました。第1回~12回までの連載に加え、書籍オリジナルのコラムや写真も多数掲載。ぜひご覧ください。