なにかと気を使う二世帯の家づくり。とくに玄関は、共有にするか、別にするかで悩みがちです。もし別にすれば、固定資産税が2倍になるという、さらなる悩みも抱えることに…。二世帯住宅を2年前に建てた日刊Sumaiライターは、「親世帯の勝手口を玄関風につくる」という方法を選択。「玄関ひとつ」のデメリットを巧みに解消、節税対策もできました。その様子をレポート。

二世帯住宅の玄関ホールと子ども
二世帯住宅の玄関は、共用にすると広くとることができ、税金面でもメリットが!
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二世帯住宅でも1戸扱いなら、納める固定資産税も1戸分に!

玄関ホールから2階に続く階段

筆者は、3階建ての二世帯住宅に夫の母、私たち夫婦、1歳の長男の計4人で生活しています。

家のリビングダイニングやキッチンなどの水回りは別々で、玄関のみ共有。1階は、玄関を除いて義母世帯のスペース、2階と3階は子世帯のスペース。1階から3階をつなぐ階段は、玄関ホールから通じており、2階へ上がるには、必ず玄関ホールを通過する仕組みです。

じつは当初、筆者は玄関ふたつのプランを検討していました。しかし、間取りの打ち合せ中、ハウスメーカーの担当者から「二世帯住宅は2戸扱いになると、固定資産税と不動産取得税が2倍になりますよ」(※)と言われて、驚き!

 

【※編集部注】
二世帯住宅は、登記上1戸とした方が、諸費用が安くなるのが一般的です。しかし、完全分離にして2戸とすることで、2倍のメリットを受けられるケースもあります。たとえば、敷地が1戸あたり200㎡以下の「小規模住宅用地」なら、固定資産の課税標準額が1/6に軽減されます。これが、2戸分だと倍の400㎡まで軽減の対象となります。また、不動産取得税も、50㎡以上240㎡以下の床面積で居宅要件を満たす新築家屋ならば1世帯当たり1200万円の控除があります。ですから、親世帯子世帯のそれぞれが、この条件を満せば、1200万円×2世帯で2400万円の控除が発生することになります。敷地条件や、建物の規模など、ケースによって、メリットは変わってきます。詳しくは専門家にお問い合わせください

 

「マンションは、1戸ごとに建物と土地を所有している扱いとなり、固定資産税+不動産取得税がかかる」、それと同じように、「二世帯住宅も、世帯を完全に区切って室内側から行き来できないようにすると2戸分扱いとなり、世帯それぞれに固定資産税+不動産取得税が発生する」ということだそうです。

さらに建築コストも、それだけ増えることに…。

「2戸分の税金を払うのはもったいない!」「義母ひとりに1戸分の税金を負担させられない。かといって2戸分負担できる資金力はない」という理由が決め手に。悩んだ末、玄関をひとつにすることにしたのです。

結果的に、コストカットできた税金分を、義母も私たち夫婦も家電や家具の購入費にあてることができ、ローンの支払いも無理なく組めたので満足。

また、間取りに自由度が生まれ、駐車場スペースも今後の活用方法に余白を残せました。

 

玄関ひとつでも大丈夫!勝手口を玄関風に仕上げる工夫を取り入れた

二世帯住宅の勝手口

そうはいっても、玄関ひとつだと「お互い仕事をしていて生活スタイルも違うし、来客の際に気をつかってしまうかもしれない」「靴など両世帯の置き場所が混ざるのはよくないのではないのでは」といった心配もありました。

筆者宅は、浴室やキッチン、トイレなどの水回り設備はふたつずつあり、共有するのは玄関のみ。来客の頻度を考えると、子世帯はそれなりにありますが、義母はたまに身内が来る程度という条件だったこともあり、1階の勝手口を義母専用の玄関として活用することにしました。

 

●玄関を勝手口にするアイデア(室内編)

勝手口の土間で靴を脱いでいるところ

まず、室内に入ってすぐフローリングにはせず、土間スペースを約1畳分確保。

 

勝手口に置かれた傘立て

土間スペースは傘立ても置け、座って靴が脱ぎ履きできる程度の十分な広さです。

筆者の息子と勝手口の方から行き靴の脱ぎ履きをすることで、おばあちゃんの「部屋」ではなく、おばあちゃん「家」に遊びにきたという演出も楽しんでいます。

 

収納量の多い勝手口のゲタ箱

土間スペースにはゲタ箱を設置。義母の希望で、ゲタ箱は収容量の多いものを選びました。義母専用のゲタ箱なので、だれにも気兼ねせず自由に使ってもらうことができています。

 

ゲタ箱真ん中のスペースの小物

真ん中に小物が置けた方が便利だと考え、ゲタ箱は上下セパレートのタイプに。義母は、鍵やマスクを置いて使っています。

 

二世帯住宅の勝手口の開閉

設計士さんのアドバイスで、勝手口のドアを開けたときに正面になる壁を延長。それにより、勝手口のドアを開閉時、部屋の中が丸見えになるのを防いでくれます。

 

勝手口に設置したスイッチプレート

靴を脱ぎ履きする勝手口の入口には、スイッチプレートを設置。帰宅後スムーズに居室の照明が点灯できるようになっています。

 

●玄関を勝手口にするアイデア(屋外編)

勝手口の外階段を子どもが下っている様子

勝手口の外階段は使う頻度が多いので、上り下りしやすい高さになるようお願いしました。蹴上げは約13cm、踏面は約25cmで、現在1歳8か月になる息子でもひとりで上り降りできる高さです。

 

勝手口へ通じるコンクリートの通路

勝手口へ向かう通路は、玄関風にする前の計画では砂利道でした。しかし、砂利だと歩きにくく、凸凹した素材だとつまずく危険性が。そのため、シンプルなコンクリートで駐車場から一続きになるようにしてもらっています。

 

センサー型ライト

暗くなると足元が見えにくく危ないので、センサー型の外灯を追加で設置しました。