持続可能な社会をつくるための「SDGs」という言葉が注目されています。一見難しそうに感じますが、じつは私たちの暮らしのなかに取り入れられることがたくさんあります。今回のテーマは「聴覚障害者とそうでない人のコミュニケーション」について。SDGsに詳しいフジテレビの木幡美子さんに、身近にできることについてつづってもらいました。
バリアを超えたコミュニケーションのために。私たちにできること
寒い季節になりました。今、温かいコーヒーを飲みながらこの原稿を書いています。
スターバックスの店内ですが、ほかの店とはちょっと違います。「いらっしゃいませ」「ご注文は何にしますか?」といった店員さんたちの声が聞こえません。とても静かで、心が落ち着きます。
ここは、数あるスターバックスの店舗の中でも、手話が第一言語の「サイニングストア」なのです。
すべての画像を見る(全6枚)JR国立駅改札口を出てすぐのところにあり、国内では初めての店舗です。聴覚に障がいがある人が聴こえる人とともに働き、注文などのやりとりは手話を通じて行われます。
●言葉を発しなくても注文はスムーズ
私は手話ができないので、注文をするときちょっと緊張しましたが、笑顔がいっぱいの女性(マスクをしていてもわかります!)が迎えてくれ、ドリンクの種類、サイズ、店内かテイクアウトかをすべて指差しで伝えます。いたってスムーズ。
受け渡しの際には手話で「ありがとうございました!」といわれたので、私も見よう見まねで返しました。
40分くらいゆったりとした時間を過ごしましたが、その間、接客とドリンクを作っていた3人はすべて耳の不自由な方でした。次々と訪れるお客様にテキパキと対応し、仕事内容の伝達も手話。私の前の若い男性はイヤフォンを外すことなく、そのまま指差しでオーダー。お客さんもとくに戸惑う様子もなく注文していきます。
手話が共通言語の店内には、基本的な手話の動作がスクリーンに表示されていました。
●壁をなくすために。伝える方法はひとつではない
聴覚に障害がある人は、日本国内で約34万人いるそうです。音による情報が入ってこないため、コミュニケーションに大きな壁があります。会話ができない、電話ができない、緊急時になにが起きているかわからない…など。
でも、その壁の一部はこちら側にあって、私たちがもっと伝える手段を持てば、バリアは減るのではないかと感じました。いろいろと考えるより、どんどんコミュニケーションをとってみるのが大事なのかもしれません。