読者から届いた素朴なお悩みや何気ない疑問に、ショートストーリーでお答えする「菊池良のふしぎなお悩み相談室」。 人気作『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社)の著者で、現在は、物語の執筆や漫画原作を担当している作者・菊池良さんの新連載の第2回です。
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ここはふしぎなお悩み相談室。この部屋には世界中から悩みや素朴なギモンを書いた手紙が届きます。この部屋に住む”作者”さんは、毎日せっせと手紙に返事を書いています。彼の仕事は手紙に書かれている悩みや素朴なギモンに答えること。 あらゆる場所から手紙が届くので、部屋のなかはぱんぱんです。
「早く返事しないと手紙に押しつぶされちゃう!」それが彼の口ぐせです。
相談に答えてくれるなんて、なんていい人なんだって? いえいえ。彼の書く返事はどれも想像力だけで考えたショートストーリーなのです。
さぁ、今日も手紙がやってきましたよ──。
【1人目のご相談】お腹いっぱい食べても、デザートや甘い物はぺろっと食べられちゃうのはなぜ?
お腹いっぱい食べても、デザートや甘い物はぺろっと食べられちゃうのはなぜ?(べつばらっこさん)
【作者さんからの解答】身体中のパーツが、甘いものを「自分にも分けてくれ!」と騒ぐから
お菓子を好きなふたりの人間がいます。
ひとりはマシュマロのふくろを持っていますが、相手にお構いなしにすべて食べてしまいました。もうひとりは当然、こう思います。
「ひとりじめして、ずるい!」
さて、人間の身体も同じような会話をしています。身体のパーツが会話するのです。こんなふうに。
「わたしは肺だけど、ケーキを食べたい」
「ぼくは血液だけど、パフェを頬張りたい」
みんな甘いものが大好きなのです。そして、みんな決まってこう不満を述べます。
「胃だけが甘いものを独占するなんて、ずるい!」
人間が甘いものを食べると、こうやって大騒ぎになります。身体中が自分にも分けてくれ、と騒ぐのです。
甘いものを食べると人間は元気が出ます。全身が喜んでいるからです。
【2人目のご相談】ほこりってどこからくるの?
ほこりってどこからくるの?(掃除ラフさん)
【作者さんからの解答】ほこりは、世界中を旅してわたしたちのもとにやってくる
この世界のどこかに、すべてがほこりにかぶった街があります。道も壁もいちめんのほこりで、ひとびとが歩くたびに舞い上がってしまいます。
「ああ、もうちょっとだけほこりが少なかったら!」
街のひとたちはいつもそう思っています。そこで街のひとたちはことあるごとにほこりに語りかけることにしました。
「この世界はとても広くて、見たことのない景色がいっぱいある」
そう言われると、ほこりはこう思うようになります。
「ああ、このままじゃいけない! もっと世界のすみずみまで行ってみたい!」
そうして、ほこりたちはどこまでも飛んでいって、ついにはわたしたちの家の窓のレールや冷蔵庫の下の見えないところなんかにたどりつきます。
「ああ、ついに自分は世界のはてにやってきたぞ。この世のすべてを見ることができたんだ」
冒険をやりとげた満足感でほこりは眠りにつきます。わたしたちが掃除機で吸い込んだり、ぞうきんで拭いたりするときには、ほこりは世界中を旅してきたあとなのです。