作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。 新年一発目の今回は、ごちそう続きの胃腸にも嬉しい発酵食品のことをつづってくれました。

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第62回「日々発酵」

暮らしっく
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●お正月は毎日お雑煮

あけましておめでとうございます。今年もゆるゆると半径5メートルのことを書いていこうと思います。よろしくお願いします。

お雑煮

このお正月は、お雑煮が美味しすぎてずっとお餅を食べていた。お餅って保存食としても、本当に便利な食べ物だと思う。寒い冬に米を洗って炊かなくても、すでに蒸して食べやすい大きさに丸めて(関東は切り餅ですね)作ってあるんだもの。昔は、毎朝薪をくべて食事の準備をしていたのだから、今の何倍も大変だっただろう。せめて正月はゆっくり過ごそうということで、年の瀬に餅をつき、お節料理を作り、三が日は極力炊事をしなくてよいようにしたと祖母に聞いた。

もち米って、今でこそ簡単に手に入るけど、昔はとても高級品で、やっぱりハレノヒの食事だったのだ。

●疲れた胃にぴったりの発酵食品

ということで、ここのところ毎日お雑煮を食べていた私。でも、久々にすっきりしたものが食べたいねえということで、赤キャベツを買ってきた。

ザワークラフト

さて、正月明けの初料理は? ザワークラウトです。ソーセージの横についている、あの酸っぱいキャベツ。ザワークラウトは、ドイツの伝統料理で、いわばキャベツの漬物。あの酸っぱさは、お酢を入れているわけでなくて、乳酸発酵によるものだ。ちなみに日本の浅漬やぬか漬けも、発酵食品ですね。

ここ数年“発酵”という言葉をよく耳にするようになった。パンや、味噌、醤油、酢、納豆、ヨーグルト、ぬか漬けといった、常食されているものに加え、塩麹とか、甘酒、キムチなんかも一般的に家で作られるようになったと思う。鮒ずしや、へしこなど、その地域独特の保存方法としても発酵が用いられてきた。そう、もともと、日本は発酵大国なのだ。近年、海外で日本の発酵食が注目されはじめたことで、日本人も健康食として再認識しはじめたのだと思う。

我が家でも、味噌や、塩麹、麹粥、ワインビネガー、パンなどなど、気づけばこの家でいろいろと発酵させているんだなあ。去年は初めて豆板醤を作ってみたんだけれど、けっこう美味しくできた。発酵食品を作りたいというよりは、“保存させたい”とか“旨味がほしい”という思いの方が強い。

発酵食品を作るのって大変そうだなあと思っている方も多いと思うのだけれど、たとえば塩麹だけ作っていて、お肉や魚ををつけたり、炒め物に入れたりすると、旨味が増して、そのまま食べるよりも食事が豊かに、そして楽になる。もちろん体にもいい。

ザワークラウトも簡単に作れる発酵食品の代表だと思う。

●ザワークラウトの作り方

作り方は本当に簡単。キャベツをざくざくと細切り(1センチくらいかな)にしてボールに入れ、そこにキャベツ全体の2%の塩をふりかけ、よくよく手で揉み込む。キャベツから水が出てくるくらいしっかり塩と馴染ませるのがコツ。硬めのキャベツで水が全然出てこないようなら、少し塩を足しましょう。

それを汁ごと瓶に詰めます。真夏は、カビが生えてしまうこともあるので、キャベツは瓶にぎゅーっと詰め込んでなるべく密閉状態に。真夏で、あまりに部屋の温度が高いときは冷蔵庫で保管するのがいいかもしれない。カビを発生させないために瓶と蓋を煮沸(蓋は数秒)するか、もしくはアルコール消毒すると確実だ。

 

こうして常温で1週間ほど寝かせると、酸っぱーいザワークラウトのできあがり(発酵の速度は季節によって違うので夏は3日もすればできあがると思います)。途中、ぷちぷちと発泡があったら、それが発酵の目印なので心配はいりません。そのまま置いておき、発泡がなくなったら乳酸発酵が整ってきている証拠。

鷹の爪や、レーズン等を混ぜても美味しいけれど、いろんな料理に応用がきくので、私は一番シンプルな赤キャベツと塩のみで漬けます。

そのまま酢キャベツとして食べてもいいし、冬場はポトフに少し入れて煮込む。すると、酸味も旨味もプラスされて、異国情緒たっぷりの夜ご飯に。お正月に食べすぎたかなあと思っている方は、ぜひお試しあれ。

私の毎日も、良い方向へ発酵させながら充実した一年を過ごしていきたいと思います!