子どもの発達に不安を感じたとき、どんな学校、教育を選べばいいのか、親としてなにができるのか不安を抱える方もいるかもしれません。
ESSEでも活躍する料理研究家でフードコーディネーターのあまこようこさんの長男・そうりくんは現在11歳。幼少期に発達遅滞の診断を受け、感覚過敏の特徴をもっています。
ここでは、あまこさんのレシピ&エッセイ『
食べないっ子も、いただきます! うちのやさしいかいじゅう ごはんレシピ』(東洋館出版社刊)より、そうりくんが小学生に進級する際に特別支援学校を選んだ背景や、食べる力が弱い子どもでも食べやすい調理のコツについてご紹介します。
特別支援学校に進級しどんどん成長した息子。彼らしい感性も発見
長男・そうりくんが0歳のときに、なにかがおかしいと思い始めたあまこさん。1歳半で保育ルームに預け、少しずつそうりくんの特性がわかってきました。3歳からは言語聴覚療法士の先生との療育も開始。その後保育園の卒業を間近にして、選択を迫られたのがそうりくんの進学先でした。
●夫婦で見学した結果、小学校は特別支援学校へ
保育園の卒園もあと数か月に迫った頃、あまこさん夫婦は、そうりくんの小学校を特別支援学校(※)に決めました。調べる前は、特別支援級(※)の方がいいのかな? 途中から普通級に行けないのかな? とも思っていたそう。
「でも支援学校と支援級、両方見学に行って納得しました。支援級は集団行動がとれないと難しそうだなと。当時のそうりが席について、黒板に向かうことが想像できなくて…。一方、支援学校は“自立が目的”と聞いて、とても納得しました。小学校でなにを学ぶか、細かいことは置いておいて、“自立”という言葉に心をつかまれました」
特別支援学校の入学式は、少し前に生まれた二男のかんりくんを抱っこして、家族4人みんなで参加。
「そうりと同じような悩みを持っている子、また違った悩みをもっている子。そんな子どもたちが、ここまでたくさんいるのを見たのは初めて。どこか、ホッとしてしまうところがありました。担任の先生がそうりを迎えにやって来たとき、初めての人には警戒するはずが、先生に自然と手を引かれるそうりを見て、成長を感じましたし、先生が子どもたちの扱いに慣れている感じも手にとるようにわかり、とても心強く感じました」
※特別支援学校は、障害のある児童を対象とした学校。特別支援学級は、通常の小学校の中に設置された、障害のある児童のための学級。
●特別支援学校での一年間でメキメキと成長
学校での取り組みのおかげで、メキメキといろんなことができるようになった、そうりくん。
「保育園のときは、先生の言葉や連絡帳を読んで、こんなことができるんだと知ることしかできなかったのですが、小学校に入って、学校の話や先生、友だちの名前がそうりの口から出てきたり、『こくご、さんすうした』と学校の出来事も教えてくれるように」
なにより、今日あったことを振り返ることができることに感動した、というあまこさん。
「クラスメイトと遊べるようになってきて、そうりの社会性が一気に伸びた1年生となり、思い出深いです」
●「敏感」という、息子の感覚
小学校2年生のときに改めて、そうりくんの発達について診てもらう機会がありました。その診断結果は「自閉傾向にある発達遅滞で、感覚過敏が強い」。どれもこれまで指摘を受けていたことなのですが、「感覚過敏」という言葉をとおすことで、そうりくんのいろんな行動や反応につじつまが合ったと言います。
「3歳になるまでオモチャを持たなかったのも、手で物に触れるのが気持ち悪かったから。歩けなかったのも、つま先しか地面につけたくなかったから。できないのではなく敏感すぎて、気持ちが悪かったんだ。私たちが普段いやだと思う黒板のキィーという音。あの感覚がそうりにはたくさんあるらしいのです」
そうりくんはにおいにも敏感で、「コーヒーのにおいがする」「お魚のにおいがする。いいにおい」と教えてくれます。
「最初に好きになったにおいは焼き魚のにおいでした。学童の帰り道は、いろんなお宅から夕飯のにおいがしてきます。それは、ごく当たり前のにおい。帰宅を急いでいる私には、もはや話題にすることもなく余裕もない時間。そんな私にそうりが、『お魚、いいにおいする』と言うんです。聞き間違えかと思い、もう一度聞くと、『お魚いいにおい』と間違いなく言っていました。こんなちょっとしたことにも気がつく、そうりの感性に感動しました」
●弟に影響されるお兄ちゃん
そうりくんが年長さんのときに生まれた、二男のかんりくんは、さまざまな面でそうりくんと真逆だったそう。
「食欲が旺盛で、2歳ともなれば、お菓子をあげれば、たいがいのことは解決してしまいました(笑)。そうりにはそれがなかったのですが、ある日『チョコ食べたい』と言ってきたんです。それからは、かんりにつられてか、そうりも口ぐせのように食べたいと言うようになりました。で、お菓子を渡すといらないと言う。言いたいだけなんですよね。それでも『〇〇したい』ということが、それまでなかったので、うれしかったです」
小学6年生になった今でも、自分の予想どおりにことが進まないとパニックになって泣き叫んだり、走って去ったりすることも。
「周りの人からしたらなんでこんな大きな小学生が甘えていうのかと思うはず。それでも大きくなるにつれ、少しずつですが、こだわりをコントロールできるようになった気もします。私自身も経験を重ね、イレギュラーなことも受け止められるようになってきたのかもしれません。そうりと一緒に親の私達も成長しているのかな、とも思います」