●陽性と連絡がきた瞬間、「自分がウイルスの塊だった」とショックを受けた

11月8日(日)
再検査の結果、また再検査に。クリニックから「再検査が続くということは、ほぼ陽性だろう」と言われため、まずは滞在しているホテルに報告。

11月9日(月)
再検査の結果連絡がないため、ホテルで待機。

11月10日(火)
クリニックから正式に「陽性」と連絡が入り、大阪の保健所へ連絡がいく。次は保健所からの連絡待ちだが、その日は連絡はなくホテルで待機。

11月11日(水)
夕方、大阪の保健所から連絡がくる。熱は36.2℃に下がっていたが、指定ホテルで隔離・療養になることを伝えられ、21時過ぎに新大阪のビジネスホテルへ移動。
PCR検査の結果が確定し、大阪の保健所から指示がくるまでの4日間、熱は36℃台と38℃台をいったりきたり。解熱剤やほかの薬も飲まずに安静に過ごしていました。

「検査結果待ちでホテルで一人で過ごしている間は、自宅に残した猫の世話、高齢の両親の体調、今後の仕事のことなどを考えると途方もない気持ちに…。

そして陽性と連絡を受けた瞬間に、自分がウイルスの塊だったという気持ちになりショックを受けました。自分がコロナに感染したことより、自分の大切な人にコロナを感染させた可能性がある方が怖かったのです」

●指定されたビジネスホテルで「ホテル療養」開始。入り口やロビーは完全に分離されていた

ホテルのロビー
ホテルのロビーはパーテーションで分離。小窓を通して受付などを行う
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「21時すぎに保健所が用意したワゴン車が宿泊先のホテルに到着。相乗りで新大阪のビジネスホテルへ移動しました。相乗りとは思わなかったので驚きました。療養先のビジネスホテルは一般用と感染者用と完全に動線が分かれていて、入り口から違いました」

ベッドの上に布団
入室後は部屋の掃除やリネン交換もすべて自分で行います

「部屋に入ると、ベッドの上には布団とリネンが一式並んでいました。正直、具合が悪いときに、のりがパリッときいたシーツを広げて、寝られるように準備するのがつらかった。すぐに寝たいのに…って(笑)」

棚にお弁当など
ホテルのロビーの一画にある棚に置かれたお弁当や備品コーナー。朝、昼、夜と置かれるので、各自部屋に持ち運びます

「療養先のホテルに入る前に、タオルや洗濯石鹸、体温計、シャンプーリンス、自分で飲食したいものなどは、自分で用意するようにと保健所から連絡がありました。最終的に何日間滞在するのかがわからないので、女性は生理用品も持っていったほうがいいかもしれません」

●周りの人の優しさが心の支えに。助け合いこそが必要

濃厚接触者になって以降、滞在先のホテルスタッフや、友人の気づかいが川上さんの心の支えになっていました。

「不安で寂しいときに、友人が温かい食事を療養中のホテルまで届けてくれて、その優しさが心にしみました。

また、感染中は食事の器も紙皿、紙コップなど使い捨てになるのですが、そういう変化もまた“自分は感染者なんだ”と自責の念にかられます。元々仕事で滞在していたホテル側に感染を報告した際、いつもの陶器のお皿やコップを出してくれたりと、温かい心づかいに感謝しています」

コロナに感染すると差別を受けたり、友人に知られるのも怖いという人もいます。

「私の場合は芸能人なのでニュースになってだれもが知る状況ですし、大事な人を感染させないためにも言わなきゃと思いました。コロナに感染したら不安になるのは当たり前で、私は感染を知ったあとも優しくしてくれた人たちに救われました。

いつ自分も感染者になるかわからない状況だからこそ、相手の立場になって、想像力を働かせて行動し、声をかけられるかが、なによりも大切だと痛感しました。感染から2か月以上が経った今、助け合いがなくては乗りきることができない病だと強く感じています」

川上麻衣子さん新型コロナ体験談<後編>はこちら: 「新型コロナは命のはかなさを知る病」。川上麻衣子さん体験談<後編>


<写真提供/川上麻衣子さん 取材・文/磯 由利子>

【川上麻衣子さん】

1966年生まれ。女優。14歳でデビューし、「3年B組金八先生」(TBS)の生徒役で注目を浴びる。以後、数々のテレビ・映画・舞台に出演。愛猫家としても有名で、仲間とともに「猫と人が暮らしやすくする提案を東京(to-kyo)から発信する」という思いを込めて、2018年「

ねこと今日 Neko-to-kyo

」を立ち上げ、理事長を務める。YouTubeチャンネル「

川上麻衣子ねこと今日neko-to-kyo

」にて、猫の情報や新型コロナ体験の動画も配信。近隣の人や猫好き仲間の情報交換の拠点になればと、2019年千駄木に「Maj no ma(まいの間)」をオープン。著書に『

彼の彼女と私の538日 猫からはじまる幸せのカタチ

』(竹書房刊)