2020年はムーミンが誕生して75年目です。
童話だけでなく、ムーミンの作者トーベ・ヤンソンが弟ラルス・ヤンソンの協力を得て、20年も連載を続けた漫画『ムーミンコミックス』も、ムーミン人気を広げました。
世界じゅうでムーミンが好かれるポイントが、ムーミンコミックスにちりばめられています。北欧に詳しいライターのルミコ・ハーモニーさんに、北欧のライフスタイルと照らし合わせながら紹介してもらいました。
ムーミンコミックスに見る、ムーミンが愛される理由
●大自然を尊敬する、なんでも手づくりする森の暮らし
ムーミン谷は大自然の中にあります。ムーミンたちが魚を釣ったり、ベリーを摘んだり、香料の入ったワインを飲んだり、手づくりパンを食べたりするのは、まさに北欧の自然と共生するライフスタイルそのものです。
すべての画像を見る(全5枚)ムーミン屋敷はムーミンパパが自らの手で建てました。ムーミンママはベリーのジャムやシナモンロールをいつもたくさんつくっておいて、お客さまをおもてなしします。
ムーミンの物語には「ムーミン屋敷はだれをも歓迎している」というテーマが貫かれています。
そのコンセプトを体現している話のひとつが、『おかしなお客さん』という作品。
冬眠しようとしているムーミン一家のもとに、さまざまなお客さんがおしかけて来るというあらすじ。クリップダッスという秘密好きのキャラクターが、屋敷にいるみんなの秘密をどんどん知っていくなかで、お互いに疑心暗鬼が生まれます。
最後にはみんなの秘密が暴かれてしまいますが、ムーミンママが「ありのままの自分でいればいいと思いますよ」と言って、みんな「どうしてぼくら、秘密を恥ずかしがったりしたのかなあ…」と気づくのでした。
●ムーミンの登場人物から伺える、多様性に寛容な北欧社会
『ムーミン』の世界に登場するのは、個性豊かなキャラクターばかり。
気弱だけれど勇敢なムーミントロール、自由と冒険に憧れるムーミンパパ、優しくて頼りがいのあるムーミンママ、コケティッシュなスノークの女の子、放浪の詩人スナフキン、現実主義者のスニフ、気取り屋のフィリフィヨンカ、職人かたぎのトゥティッキ、バラが大好きな署長さん、悪さをするスティンキー、ハードボイルドのちびのミイ、惚れっぽいミムラなどなど…。
さらにムーミンコミックスには、スポーツ万能なブリスク、気位の高いサーカスのプリマドンナ、わがままな人魚など、コミックスにしか登場しないゲスト・キャラクターも多彩です。
『まいごの火星人』というお話では、なんと火星人まで登場。異質な存在と関係を育んでいく様子が垣間見られます。
●安らぎ、哀愁と孤独と一日のちいさな幸せ
人気キャラクターのひとり、スナフキン。彼が孤独を愛し放浪する様に憧れる人も多いと思いますが、フィンランドの多くの人々もこのように感じることを大切にしています。
ムーミンたちは小さい出来事、小さい幸せを大事にしています。『ひとりぼっちのムーミン』というお話では、スニフに「そんな気弱じゃ金持ちにも有名にもなれないぞ」と焚きつけられたムーミンが、言われるがままに無理していろいろなことをやってみたものの、結局「のんびり生きたいんだ。リンゴの木を植えたり、貝殻を拾ったりしてね」と言います。
手づくりのお菓子を食べること、太陽を浴びること、暖かいパンケーキを食べること、ちょっとした神秘的な森道を歩くこと…。
忙しい日本ではついつい見逃してしまっているところに、北欧ならではの幸せのヒントがありそうです。
「ムーミン コミックス展」が開催中(10月12日まで)
このように、幸せのヒント満載のムーミンコミックス。ムーミン誕生75周年を記念して、「
ムーミン コミックス展」が松屋銀座で9月24日から10月12日まで開催されています。
トーベとラルスによる連載漫画の原画など280余点が日本公開。
松屋銀座で開催されたのち、2年間で全国11会場を巡回予定となっています(開催会場は順次発表予定です)。