明子さん(仮名・40代前半):相手に合わせる必要がないから自由になれた。お互いの幸せを尊重できるんです

レス生活のなかで、「夫とは同じ会社の同僚のような感じ」と表現するのは、明子さんのケースです。

高校生の子どもがいる明子さん夫妻は、子どもが小学生のころ「いつ起きてくるかわからない」という思いから、なんとなくレスに。
冬など寒い時期は、温まるためにお互いに近寄ったりすることはあるものの、とくに問題意識もなく、現在に至ります。


「もともとお互いに淡白なタイプで、よく子どもを授かれたなあって思います」と笑う明子さんは、このままセックスがなくてもいいという考え。「おそらく夫もYesだと思う」と話してくれました。

●普段の生活が楽しいから、どちらかに合わせてまでセックスに割いている時間がない

夫婦
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明子さんと夫は、もともと大学院の同級生という関係。現在も、学生のときのディスカッションする感覚で言い合うので、娘がハラハラして見ていることもあるのだとか。

「性生活があったときは、お互いに所有物のような感覚を抱いていました。それが、今では同じ会社の同僚のような感じ。性生活よりも自由が勝っているというか…。お互いに束縛されたくないタイプなので、今の生活は干渉されずに自由に過ごせてラクです」

その分、お互いの幸せを尊重するようになったと言います。
「夫は家にいたいタイプで、私は外で新しいことを探したいタイプ。以前は、どちらか一方に合わせようとしていましたが、合わせないことで互いが幸せなんだという結論に達しました。性生活も、お互いが望むパターンがなんとなく異なっていたからレスになった気がします。合わないなら、合わせなくていいかって」

昨年は単独海外旅行も体験した明子さん。「普段の生活が本当に楽しいので、どちらかに合わせてまでセックスに割いている時間がないのかも」と分析してくれました。

●ひとりの人間として尊重してもらえていることの方が、すてきでうれしい

今回のインタビューをとおして、明子さんは、自分が「性を意識して生きていなかった」ことに気づいたそう。

「夫が男性だったから好きになったのではなく、彼という人間だったから好きになっただけ。夫も私のことはひとりの人間として見てくれていているように感じます」

夫は、明子さんの行動をおもしろがってくれるタイプ。
「ことあるごとに『明子はおもしろいねぇ』って言われます。私自身も、夫は今なお興味深い存在。『女性だから』ではなく、ひとりの人間として尊重してもらっていることの方が、すてきでうれしいことのように思っています」

そう語る明子さんからは、セックスレスという言葉ではくくれない、夫婦の絆を感じました。

今回取材してみて、レスであっても、互いに納得していたり歩み寄ったりしている夫婦からは、現状に満足している様子が伝わってきました。
セックスレスで夫婦の関係が揺らぐのは、“夫婦のコミュニケーションの欠落”が隠れているからなのではないでしょうか。

セックスレスという言葉がこれほど一般的になって、多くの夫婦がそうであっても、内情はじつにさまざま。
「みんなそうだからうちもいい」ではなく、「結婚生活が長いからもういい」でもなく、ひとりの人間として相手を思いやる気持ちが、セックスレス問題を解決するカギになるのかもしれません。