双子や三つ子など、「多胎育児」の大変さに注目が集まっています。
NPO法人フローレンスと「多胎育児のサポートを考える会」が多胎家庭1591世帯を対象に行ったアンケート調査によると、多胎育児当事者の93.2%が「気持ちがふさぎ込んだり、落ち込こんだり、子どもに対してネガティブな感情を持ったことがある」と回答。
当事者以外にはなかなか伝わりにくい多胎育児の現状について、実際に双子を育てているESSE読者ふたりに取材しました。
双子用ベビーカーだと、買い物できる場所も限られる
すべての画像を見る(全3枚)1人目は、7歳の長女と、5歳の二女、三女(双子)を育てている松村亜樹さん(仮名・31歳)。松村さんは、「双子だから無理という壁が、世の中にはたくさんあります」と訴えます。
「たとえば、幼稚園送迎に自転車が使いたくても、双子の場合難しい。一般的な子ども乗り自転車は、後ろは6歳まで乗せられますが、前は15kgまでや3歳までなどの上限があります。双子だと前の席だけ先に体重オーバーしてしまうんです」
●前後に双子、さらに背中に長女をぶら下げて…
赤ちゃん時代の双子ベビーカーについても、「とにかく外出が困難」といいます。
「小さいスーパーだと、カートとすれ違えないため、そもそも買い物に行けません。大きなスーパーでも『邪魔だ』『若いのに』と言われたり…。エレベーターを待っているとき、一緒に並んでいた年配の男性に露骨に嫌そうな顔をされたこともあります。夫と一緒の場合はまだいいのですが、私と子どもだけだと心理的にもハードルが高く、エレベーターに乗れずに何度も見送っていました」
ベビーカーが使えない場面では、抱っこひもで双子のひとりを、片腕でもうひとりを抱えて移動。
「さらに上の子までグズると、背中に上の子をぶら下がらさせて、両脇に双子を抱えて、むりやり肩にママバッグをかけて…地獄絵図の日々でした(笑)」
●気づいたら涙を流していたことも
夫の仕事が忙しく、また両親も遠方のため、平日はワンオペ育児をせざるをえなかった松村さん。どうしてもひきこもりがちになり、外出は週に1度、夫に子守をまかせている間に1週間分の買い物に行くときだけ、という時期も。
「とにかく目の前のことをやるしかなくて、双子が1歳になるまでの記憶がほとんどなく、体もやつれました。ふと気づくと涙を流しているときもあって、今思えば産後クライシスだったんだと思います」
双子にかかりきりになってしまったぶん、長女の赤ちゃん返りもあったといいます。
「トイレトレーニング中だった長女が、コタツでウンチをもらして、そのにおいをかいだ双子もバウンサーの中で吐いて…なんてこともありました。でも一方でしっかりするのも早くて、私のお手伝いをしてくれるようになり、とても助かっています」
双子育児を経験したことで、松村さん自身は完璧主義を自分に求めなくなったそう。
「長女のときは『服はオーガニックじゃないと』『常に清潔にしていないと』などと思っていましたが、そんなことを言ってられない状況。いい意味で、育児に対しておおらかになれました。おかげさまで子供たちは元気に育ってくれています」