ペットを家族の一員として大事にする家庭が多い一方で、住宅や健康などさまざまな事情で飼育放棄される動物たちがいます。そんな動物たちを「保護動物」として自宅に受け入れる人たちが増加中。
保護動物が新しい家族に出合うための場としては、動物愛護団体が行う「譲渡会」があります。譲渡会を通じ、自身も保護犬「ふうちゃん」を迎えたイラストレーターの岩沢さんが、詳しくレポートしてくれました。
保護動物を家族に迎えるときに知っておきたいこと
今回、わたしが話をうかがった動物愛護団体「ランコントレ・ミグノン」では、月に2回、保護している動物と、動物を引き取りたいと考えている人たちとの出合いの場「譲渡会」を開催しています。
わたしたち家族が、現在一緒に暮らしている保護犬「ふうちゃん」と出合ったのも、こちらの譲渡会でした。
おじゃました日はあいにくの雨でしたが、それでも、「ミグノン」の活動拠点でもある譲渡会の会場にはたくさんの参加者が。
「ミグノン」の代表、友森玲子さんに、保護動物を引き取る人が増えているなか、保護犬や保護猫を家族に迎えるときに知っておきたいことを伺いました。
――保護動物を迎えるときに、注意すべきことはありますか?
見た目で選ばないことですね。
みんな写真を見て、「運命を感じました!」って来てくれるんですけど、その家族とキャラクターが合わないのに、「顔が気に入ったので」で迎えると、ミスマッチでお互いに苦労してしまいます。
普段世話している人は「この子はこういう感じだな」と知っているので、保護している人に、自分の環境や家族の話をするのがおすすめ。
どんな仕事をして、何時間家をあけているとか、休みの日の過ごし方なんかも。たとえば、「家でごろごろするのが好き」な人には「一緒にごろごろできる性格だったら、この子」、「アウトドアが好きでよく出かけている」人には「将来、一緒にアウトドアを楽しむなら、この子」というように紹介することができます。
動物たちが送りたい生活と、家族が来てほしい動物が、それで初めてマッチするので、見た目や犬種にこだわらず、合うキャラクターの子を探すのが大切です。
じつは、わたしたちも、初めはミグノンのサイトで、ふうちゃんではない子の写真が気になって、実際に会ってみようと、譲渡会に向かったのです。
でも、スタッフさんに犬初心者であることなどを含めていろいろとご相談し、最終的にふうちゃんをお迎えすることに。自分たちに合う子、写真だけでは分からなかったな、と思います。スタッフさんたちにご相談しやすい雰囲気があり、ありがたかったです。
――強い不安や恐怖心を抱えている動物と接するときに心がけるべきことは?
まずは、相手の気持ちになってください。
もともと怖がりで、人とコミュニケーションを取るのが苦手な動物が知らないところに来てドキドキしている状態なのに、いきなり「今日から仲よくしようね」と触りすぎてしまうと、余計怖がらせてしまいます。
緊張しているときは、そっとしておいて相手の気持ちを考えて待ってあげる。「あれもできないのか」「これもできないのか」と、あせって決断を下さないで、「今は怖くてちゃんと考えられないだけだから、ちょっと待ってあげよう」とか「落ち着いたらこれを教えてあげよう」とか、自分の考えとか自分のペースを押しつけないことが大切です。
どんな動物を飼うときもそうですよね。
動物との出合いは結婚と同じ?心地よく暮らす秘訣は
最後に、個人的な悩みもご相談。
ふうちゃんを迎えてすぐに、トイレトレーニングを始めたのですが、いつも屋外で用を足してしまって、どうしても家のトイレではしてくれません。そのことがずっと気になっていたのですが…。
友森さんにうかがったら、思っていた以上に深い、動物とのつき合い方をお話ししてくださいました。
――トイレトレーニングを失敗して、外でしか用を足さないのですが…。
それは、犬の習性で当たり前のことなので。
寝室におまるを置いて「ここでやってね」っていうようなものなので、本来はおうちではしないんですよ。
――今現在、大きなトラブルが起きていなければ、神経質にならなくても大丈夫でしょうか?
動物を飼うのって、結婚生活に似ているなと思っていて。
一緒に暮らしていると、気に入らないところがあっても、ここだけは譲れないけど、平和的に大ゲンカせずにいられるのであれば、それ以外のところはまあいいやと、お互い妥協しながら決めていくじゃないですか。
それと一緒で、ここでトイレをしてほしいとか、散歩のときにはぴったり追いついてとか、いっさい吠えないでとか、いたずらもしないでとか、人間側の都合だけ押しつけて、自分だけが幸せというのはちょっと違う。
遊びの欲求が強い子には遊んでいいオモチャを渡したり、飼われる犬や猫もそれぞれの希望があるので、それを取り入れつつ、「じゃあこれでどうでしょう」と妥協案を提案するのがいいと思うんですよね。
「動物を飼うのは結婚生活に似ている」
友森さんのこの言葉が、とても印象に残りました。
大変なことも、楽しいことも共有しながら暮らしていくうちに、ふうちゃんはすっかり家族になりました。
その過程は、わたしとオットが長年、思いやったり、ぶつかったりしながら、お互いにとってよい道を探ってきた過程と、変わりはありませんでした。人間も動物も、家族になってゆく道のりは同じ。
これからも、心地よい距離感を探しながら、コミュニケーションする努力を怠らないようにしたいと、気持ちを新たにしました。
【ランコントレ・ミグノン】
2007年より、東京都動物愛護相談センターから犬猫などの受け入れを開始。ペットサロン、クリニックが一体となった「ミグノン・プラン」で、毎月第2日曜日と第4土曜日に譲渡会を行う。今年9月、昭和女子大学人見記念講堂にて「いぬねこなかまフェス2018」を開催予定