「飲む点滴」ともいわれる甘酒。市場規模は右肩上がりで、スーパーやコンビニでもよく見かけるようになりました。そんな甘酒、じつは飲むだけではもったいない優等生なのです。
「調味料として万能に使えるんですよ」と語るのは、料理研究家の舘野真知子さん。『料理用あま酒、はじめました。』という著書もあり、甘酒に造詣の深い舘野さんに、詳しくお話を伺いました。
甘酒ひとつで「砂糖+酒+だし」のような効果!上品で優しい甘味が特徴
甘酒のよいところは、塩麹のように幅広く料理に使えること。
「料理に甘味をプラスしたり、食材の臭みを消したり、うまみを引き出したり…。甘酒ひとつで、砂糖や酒、だしなど、いくつもの役割をはたしてくれます。そのため、使う調味料や工程はシンプルになるのにもかかわらず、いつもの料理が驚くほどおいしく格上げされるのです」
ところで、甘酒には2種類あるってご存じでしたか? そのふたつとは「麹と米でつくられたもの(麹甘酒)」と、「酒粕に砂糖などを混ぜてつくられたもの(酒粕甘酒)」。
今回料理で使用するのは、前者の「麹甘酒」です。麹菌がお米のでんぷんを分解し、ブドウ糖や麦芽糖、オリゴ糖に変化させることで発生した自然の甘味が特徴。アミノ酸やビタミン類、食物繊維などの栄養成分も含んでいます。
「すき焼き」に使えば、いつもの牛肉がより上等な味わいに!味のしみ込みも抜群
まずは、砂糖の代わりに料理に使ってみましょう。ただし、市販品によっては甘さやとろみが違うので、分量を調整しながら好みの味に仕上げてください。また、甘酒に塩分が加えられている場合は、料理の塩加減をみて使用します。
なお、普段の料理に甘酒を使う場合、「砂糖大さじ1=甘酒大さじ5」を目安に置き換えるといいようです。
今回ご紹介するのは、シュガーフリーでヘルシーな「すき焼き」。割下が、ほどよくさっぱり、上品に仕上がるのはもちろん、牛肉はふっくら&やわらかに。芳醇なうま味さえ感じます。高いお肉を用意しなくても、最高のごちそうが完成するというわけです。
また、味が入りにくいしらたきや豆腐にも早くしみ込むので、具材が同じタイミングで食べ頃になるのも、甘酒ならではのメリットです。
●すき焼き 甘酒だれ(※でき上がりは上写真参照)
【材料(2人分)】
牛すき焼き用肉…200g
焼き豆腐…1/2丁
長ネギ…1/2本
春菊…1/2束
シイタケ…4枚
しらたき…1/2パック
牛脂(あれば)…1個
A[甘酒…100cc しょうゆ…大さじ2]
卵…適量
【つくり方】
(1) 焼き豆腐は6等分に、長ネギは1cm幅の斜め切りに、春菊はざく切りにし、シイタケはかさに切れ目を入れる。しらたきは食べやすい長さに切る。
(2) 鍋を熱し、あれば牛脂(または、油大さじ1)を入れ、長ネギの両面を焼きつけ、端に寄せて牛肉を焼く。
(3) Aを加え、煮立ったら焼き豆腐、シイタケ、しらたきを加えて煮る。
(4) 仕上げに春菊を加え、さっと加熱し、溶いた卵につけていただく。
麹にお湯を注ぐだけ!「料理用甘酒」は、自宅で簡単につくれる
最後に、甘酒のつくり方をご紹介しておきます。もちろん市販品もいいけれど、自家製の味はまた格別。
材料は、米麹とお湯だけ。今回は、どの家庭にもある保温ボトルの中で発酵させるレシピです。分量どおり、時間どおりにつくれば、失敗することはありません。
「料理用(調味料)」に特化する場合、ドリンク用の甘酒よりも少し濃厚に仕上げます。
【材料と道具/約450cc分】
乾燥米麹150g(生麹の場合は200g)、湯(60~62℃)300cc、保温ボトル(500cc以上)、温度計
(1)麹を入れる
保温ボトルに熱湯(分量外)を注ぎ、あらかじめ温めておく。湯を捨て、手でほぐした米麹を入れる。
(2)お湯を注ぐ
60~62℃のお湯を注ぎ入れ、フタを閉めて全体がなじむように振り混ぜたら、温かいところに3~4時間おく。
温度の管理には、デジタルの温度計が見やすくて便利。
(3)加熱する
一度鍋に移し、弱火で1分ほど、鍋の縁がふつふつと泡立つまで加熱し、60℃まで温度を上げる。
全体的に沸き立つのではなく、鍋の縁だけが泡立った状態が目安。
(4)ボトルに戻す
もう一度ボトルに戻し入れ、さらに3~4時間おく。寒い時期は、なるべく温かい場所におく。
(5)完成!
ほんのり黄みを帯び、甘味が出ていたら完成。密閉保存容器に入れ、冷ます。
【保存方法】
保存は冷凍庫が安心(2、3か月)。品質が変わりにくく味を均一に保て、糖度も上がります。
清潔な密閉保存袋に入れ、平らにならしましょう。糖度が高くカチカチに固まらないので、取り出しやすくなります。
すぐに使う場合は、あら熱をとって冷蔵庫へ(2、3日)。納豆などのほかの菌に影響されるので、必ず清潔な密閉容器に入れること。