最大震度7を観測した熊本地震から1年が経とうとしています。「地震以降、友人や知人に会うとよく話すのが、地震が起きた直後に、ああすればよかった、こうしていれば、といった失敗談や反省点なんです」。そう語るのは、熊本市中央区在住のライター、松野久美さん。家具や家電の転倒防止対策、あるいは非常用の食料備蓄など、オーソドックスな防災対策とは別に「ちょっとしたことながら、じつは知っておくと意外に助けられることがある」というのです。どんなことなのか、主婦の目線でくわしく語っていただきました。

熊本地震直後の失敗からわかった、地震のときにやっておくとよかった3つのこと

1 地震で荒れた部屋の片づけは、そこそこでよかった

地震で荒れた部屋の片づけ
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※写真のように、タオルをひいた収納ボックスに散らかったものを簡単にまとめくだけでよかったかも…

 地震で散乱した部屋はできるだけ早く片づけたい。通常の生活を取り戻すためにも、主婦ならだれもがそう思うかもしれません。でも、片づけはひと呼吸おいてあせらず、様子を見てからとりかかった方がよさそうです。

 私の知人は、4月14日の夜、前震が落ち着いた頃に、飛び出したものを元に戻したり食器棚や電子レンジの扉にガムテープをはって固定したりと完璧に片づけたそうです。ところが、その後の本震でそれ以上に部屋が荒れ、時間をかけた地震対策が台なしになってしまいました。

 前震・本震に限らず、東日本大震災のときも大きな余震がしばらく続きました。ワレモノをはじめ危ないものだけをサッと片づけたり、高い位置にあるものを低い場所に移動しておくくらいとどめた方がよいかもしれません。きっと知人も、二度手間のストレスも感じずにすんだことでしょう。

2 パッと出やすいつっかけサンダルより、スニーカーを履けばよかった

パッと出やすいつっかけサンダルより、スニーカーを履けばよかった

 片づけの観点からだと、玄関のたたきにはなにも置かない方がいいといわれますよね。でも、一度大地震を経験すると、履きなれたスニーカーなどを出しっぱなしにしたり、すぐ取り出せる所に置く方がいいと感じました。

 私は当時、あわててつっかけで出たのですが、すぐに後悔。地震のあとはガレキや亀裂など足場が悪い所がかなり多く、無防備なサンダルではケガをする可能性も高くなるので、今考えるとゾッとします…。しかも夜は足元から冷える!

 地震後もしばらく外の様子をうかがいながら避難したりするので、履くのが面倒でもスニーカーを選んでおくと安心。もちろん、少しでも早く外へ出た方がいい状況だったら話は別です。

 震災以来、わが家では、底が厚めのスポーツシューズなど、手持ちのなかでいちばん滑りにくいもの、水濡れしないものを選び、夫婦で一足ずつ、玄関のたたきに置いておくようにしています。普段ヒールやビジネスシューズを履くことが多い人も「緊急時はこれ」と靴を決めておくだけでも万が一のときにあわてずにすみます。会社に置く社内用靴も、緊急時を考えて少しでも危険を回避できるタイプにしておくのがいいかもしれません。

3 飛び交う情報を鵜呑みにしなければよかった

「Aの避難所で給水が行われる」「Bでおにぎりが10円で売られている」など、ネットやSNSを中心にさまざまな情報が流れました。小さな情報でもキャッチすると安心につながりましたが、水道の復旧といった県・市の公共団体が発信したものでも反映されるまで時差がありましたし、一方で裏づけが難しいウワサレベルのものも錯綜し、多くの人が振り回されていました。

 当時を振り返ると、もう少しゆとりをもって情報に向き合えばよかったのではないか、情報に敏感になりすぎた結果、イライラしたり不安になったりと、心を余計に疲弊させていたのでは、と友人ともよく話しています。実際には不安で仕方なくなってしまうのですが、まことしやかな情報はすぐには鵜呑みにしない、公式の情報にも焦って動かないなど、ひと呼吸してから判断することが大事だな、と心にとめています。

 地震から半年が経った2016年冬あたりから、復旧工事を待たされていた一部損壊住宅の補修工事が始まったり、益城町付近では仮設住宅を多く見かけるようになったりなど、徐々に復興の手が広がってきたように感じています。私自身も、去年の反省を少しでも生かした生活をできれば、と思います。