いつ起こるかわからない大地震。それが念願のマイホーム引き渡し直前に起きたら、だれその修復代金を負担するか?契約をなかったことにできないか?気になりますよね。これを法律用語で「危険負担」といいます。今回は、自然災害や、第三者の放火など、売主にも買主にも過失がないケースで、購入したマンションが大きな被害を受けた場合、売買契約がどうなるかという問題です。あなたは、建設中のマンションが気に入り、売買契約を締結しました。その後、引き渡し(所有権移転)をする前に、大地震が発生。マンションも大きな被害を受けました。この場合、契約をキャンセルすることはできるのでしょうか?では、さっそく答えを解説していきます。

建築中のマンション
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目次:

民法改正前は、売買契約で所有権が移ると、リスクも一緒が基本2020年の民法改正で、危険負担のルールが明確に新築工事中に敷地から小判が出てきたら、もらっていいの?

民法改正前は、売買契約で所有権が移ると、リスクも一緒が基本

不動産の売買契約書

地震や風水害、第三者による放火など、売主はなんの落ち度もないケースは、ありえないことではありません。

2020年に民法が改正されるまでは、建物のような特定物の場合、売買契約によって目的物の所有権が、買主に移転するのと同じように危険負担(リスクの負担)も移転するものとされていました。法律専門用語でいうところの「債権主義」です。

売主には、なんの落ち度もないので、代金の支払い義務は消えず、損害賠償も、契約解除もできませんでした。また、建物が損傷を受けたからといって、代金の減額を請求することも認められていませんでした。まだ引き渡されていないのに、この条件で契約を結ぶのは、買主側にとって大きな負担となります。

もっとも、実際の不動産の通例は異なりました。契約時に、そのようなことが起きた場合、買主は売買代金を支払う責任を負わず、手付金の返還も受ける、または双方が売買契約を解除することができると、定めるのが一般的に。買主側の負担を減らすためです。だからこそ、納得できる内容か、契約書を確認することが非常に大事でした。

このように、とくに定めがない限りは、危険負担は、売買契約とともに買主側に移るというルールが長く続いていましたが、2020年の民法改正により、大きく変わりました。

2020年の民法改正で、危険負担のルールが明確に

リスクをなくす

改正された民法では以下のように明記されました。

当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者 は、反対給付 の履行を拒むことができる 。(民法536条1項)

つまり、建物の被害の程度によっても変わりますが、今回のようなケースでは、とくに契約書に定めなくても、代金の支払いを拒否することと、契約を解除する権利が生じます。

ですから、答えは以下のようになります。

正解…代金支払いの拒否や、売買契約の解除(キャンセル)ができる可能性が高い

ただし、売主には非はありませんから、引っ越せなかったといって損害賠償請求はできません。

軽微な損傷の場合は、引渡し前の危険負担ということで、売主側が補修し、買主に引き渡すということになります。

この危険負担は、引き渡しとともに買主側に移りますので、引き渡し後に災害に被害や放火された場合は、もう支払いの拒絶や解約解除は認められません。

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