家好き芸人・アンガールズ田中卓志さんが、個性豊かな建築家の自邸を突撃取材! 田中さんは広島大学工学部第四類建築学部卒業。大学では建築の構造を研究し、得意分野は日本建築だそう。今回訪れたのは、20坪ほどのコンパクトな敷地に建つ木造2階建てをリノベーションした、建築家・河内一泰さんの住まい。元の建物の形はそのまま生かしながら、外階段を設けて住居とオフィスを分離したり、池袋を見渡せる屋上に面して開放的な寝室を設けたりと、建築家らしいセンスあふれるアイデアが満載です。
すべての画像を見る(全16枚)視線をコントロールした外階段から、LDKへ
住居とオフィスを分離するために、バルコニーを撤去して新たに外階段を設けました。
建物を外階段ごと半透明の波板で覆うことで、南からの光を取り込みつつ、視線をゆるやかに遮り、プライバシーを確保しています。
「もとの四角い家に、もう1枚カバーを付けた状態。外から見えても差し支えないところには何か所か穴を開けて、開放感を得ています」(河内さん)
階段を上った先の2階には、LDKを配置。もともと1階とつなぐための内階段がありましたが、生活と仕事をきちんと分けるために内階段は撤去しています。
また、既存の壁や天井を取り除いてスケルトンにして白く塗装することで、コンパクトながら明るく開放的な空間を実現。
そんな伸びやかな空間に合わせたのは、大きなL字型ソファ。そして、壁や天井にはキャットウォークも設置して、愛猫ものびのび暮らせるようになりました。
さらにLDKの一角には、長女の勉強机も設置。足踏みミシンの足に天板を付けて作ったという勉強机を見て、「あれ? これ、ミシンですか? どうなってるの?」と不思議そうな田中さん。
リビングと一体化したキッチンは、広い天板と大きなシンクが印象的。トーヨーキッチンスタイルのシステムキッチンを採用しています。「シンクが広くて使いやすそうだな~」と田中さん。
キッチン背面の棚は、河内さんが学生時代に製作したものだそう。
「当初はテーブルの脚として使用していたもので、まさか食器棚になるとは思いませんでした」(河内さん)
また、ダイニングテーブルを置くスペースがなかったため、食事ができるようにカウンターは少し広めに。オールステンレスのキッチンに、DIYで木のカウンターを継ぎ足しています。
コンロはフラットなIH調理器なので、食器なども並べることができて、「週末ごとに友人が遊びに来る」という河内邸では、パーティスペースとしてキッチンが大活躍しています。
【この住まいのデータ】
▼家族構成
40代夫婦 長女小学生
▼住宅の面積やコスト
延床面積/89.10m²
内階段があったスペースをガラス床に
もともと内階段があって抜けていた部分は、ガラス張りに。初めはふさぐ予定でしたが、「1階は仕事スペース。子どもに父親が仕事をしている姿を見せるのもいいかな」と思って強化ガラスを採用したのだそう。
「椅子の下がガラスって、ちょっと怖いかも~。宙に浮いているみたいだな」と驚く田中さんに、「ガラスとガラスの間にフィルムをはさんで、万が一割れても下に落ちないようにしているから大丈夫ですよ」と河内さん。
「上から1階が見えるって、すごくいいなあ!」と田中さんは大はしゃぎ。
子どもが小さい頃は下からハイハイするのが見え、今はたまに猫が通過するのを1階から眺めているのだそう。
「ここから見上げると、より高さが感じられますね~」と田中さん。
1階のオフィスは最大天井高4m!
2階の住居スペースからオフィスへは、外階段でアクセスします。床材にはラワン合板を採用し、土足OKの空間に。既存の天井を取り除いたことで、天井高は2.7mという高さを確保することができました。
DIYで作ったという階段を降り、床を掘り下げたところに打ち合わせスペースがあります。こちらの天井高はさらに高くて、なんと4m。
そんな大空間の打ち合わせスペースに吊り下げられた照明も自作したもので、天井のスペースをほどよく埋めてくれます。
池袋を一望できる屋上テラスと寝室
2階から内階段を上がって、寝室と屋上テラスがある3階へ。屋上に増設されたかたちになっている寝室は、南側の半透明の波板を通して光がたっぷり入ります。床材は3階と同じくパインフローリング。
高さ制限のため、天井高は1.9mに抑えられ、身長188cmの田中さんが立つと髪の毛が天井に触れるくらいの高さです。
「でも、テラスがあるから広く感じるし、圧迫感がないですね」(田中さん)
池袋の景色が一望できる気持ちのいい屋上テラス。開放的でありながら、周囲からの視線は気にせず過ごせるのが魅力的です。ここではパーティーも可能ですが、普段は愛猫の遊び場になっているのだとか。
「こんなにいい場所をいちばん使っているのが猫だなんて(笑)」と田中さん。
視線の抜けもよく、夜には美しい東京の夜景が楽しめます。敷地面積はコンパクトながら、高さや視線の抜けをうまく生かして開放感を生み出している河内邸でした。
間取図と配置図
【取材協力】河内建築設計事務所代表の河内一泰さんは、1973年千葉県生まれ。1998年東京藝術大学美術学部建築学科卒業、2000年同大学大学院修士課程修了。難波和彦+界工作舎を経て、2003年に河内建築設計事務所を設立。東海大学建築学科で特任准教授を務める。
撮影/林 紘輝 ヘアメイク/石川真理
※情報は「住まいの設計2019年6月号」取材時のものです