家好き芸人・アンガールズ田中卓志さんが、個性豊かな建築家の自邸を突撃取材! 田中さんは広島大学工学部第四類建築学部卒業。大学では建築の構造を研究し、得意分野は日本建築だそう。今回訪れたのは、コンパクトな敷地に居心地のいい空間をつくり上げた、川崎修一さん・久子さんのお宅。1階を地面から1m上げることで視線をずらしたり、バルコニーにグリーンを配して外への広がりをプラスさせたりと、狭さを感じさせない工夫であふれています。
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視線をずらすことで開放感と快適性を高めたLDK子ども部屋が2フロアある贅沢。用途によって使い分け寝室とつなげた屋上庭園には自動水やり機を設置グレー×タイル×木のバランスが絶妙なインテリア間取図と配置図視線をずらすことで開放感と快適性を高めたLDK
下町の風情が色濃く残る東京・谷中に建つ川崎邸。下町ならではの狭い路地に面している、約20坪のコンパクトな敷地です。
「前の道が狭いので、1階は地面から1mほど高くして、視線をずらしています。バルコニーはさらに80㎝上げて1.8mのフェンスを設置することで、向かいの建物からの視線もカットしています」(川崎さん)
「視線はまったく気にならないですね。ダイニングを低めに抑えた分、リビングの天井がより高く感じられます」(田中さん)
壁やフェンスでうまく外からの視線は遮りつつも、ハイサイドライトやトップライトを設けてLDKに光が届くようにひと工夫し、開放感を感じられる明るい空間に仕上げました。
1階は玄関を入ると、いきなりダイニングキッチンが登場するという大胆な間取り。玄関の正面にあるキッチンの壁面は目に入りやすいため、久子さんがとくにこだわって、長江陶業のモザイクタイルを採用しました。
「このタイルと壁、おしゃれですね~。モデルルームかショールームみたいにスッキリしてる! 」(田中さん)
キッチンの奥にはパントリーを設けました。「収納をきちんとつくると、物が片付かないストレスがありません」と久子さん。
「大量に収納できて使いやすそう~」と田中さんは感心。
そして視線を少し横に向けると、階段下のデッドスペースに洗濯機置き場が。また、リビングにあるテレビの配線なども壁を通してこのスペースにまとめているので、くつろぎのスペースはスッキリ。
テレビは階段の壁面の厚みを生かしてはめ込まれていて、その配線が階段下部分につながっています。
【この住まいのデータ】
▼家族構成
50代夫婦 長女小学生
▼住宅の面積やコスト
延床面積/71.29m²(1階44.41m² 、2階28.64m²)
子ども部屋が2フロアある贅沢。用途によって使い分け
リビングと子ども部屋はスキップフロアでゆるやかにつながります。
「以前はリビングの一角が子どもの遊び場で、おもちゃが広がっていると落ち着かないし、いちいち片付けるのも大変」(久子さん)だったそうですが、個室ができたことで、親も子もそうしたストレスから解放されました。
2階部分にはベッドやベンチとして使える小上がりを設けました。淡いブルーの壁紙は長女が選んだもの。おこもり感があって、親子げんかをしたり、ひとりになりたいときには最適な空間です。
「アクロバティックで面白いな~。いい子どもに育ちそう!」と田中さんが覗き込みます。
寝室とつなげた屋上庭園には自動水やり機を設置
現在は布団を敷いて家族3人で寝ているという川崎さん家族。南側にプライバシーが守られているルーフバルコニーを設け、光と風を取り込んでいます。
また、バルコニーとの段差を活用して本棚を設置しました。
「子どもが小さいときは寝かしつけに絵本を読むので、寝室に本棚があると便利なんです」(川崎さん)
寝室はグリーンを配したルーフバルコニーに面しています。土を入れることで、下のリビングの断熱材代わりにもなっているのだそう。
「緑が目に入ると、不思議と狭さが気にならなくなるんですよね」(久子さん)
「ルーフバルコニーに出ると、視線が空に抜けて、すっごく気持ちよかった。決して広くはないけれど、土に触れられる場所があるのは癒されますね。自動の水やり機を設置していて、タイマーで水やりができるのも便利だなと思いました」と田中さんは大きく背伸びして深呼吸。
グレー×タイル×木のバランスが絶妙なインテリア
LDKの一角にある階段スペース。左側は子ども部屋、右側は2階につながります。階段側の壁のみをグレーに塗装。そして正面にはトイレを配置しました。
1階のトイレは来客時に使用するため、手洗いカウンターを設置。腰壁に採用したモザイクタイルが広がりを感じさせます。
「タイルといい、壁といい、グレーがすごくハマりました。木とのバランスも絶妙」(田中さん)
「小さく建てて大きく暮らす」と話してくれた川崎さん。地上と視線をずらしたり、ルーフバルコニーで広がりを演出したり、キッチンのパントリーをはじめとする収納を工夫したりと、コンパクトながらゆとりを感じさせるポイントをたくさん発見できました。
間取図と配置図
【取材協力】川崎建築計画事務所2001年設立。住宅をはじめ、学校などの計画・設計も手掛ける。代表の川崎修一さんは大学講師や東京地方裁判所民事調停委員なども務めている
撮影/水谷綾子 ヘアメイク/榊 美奈子
※情報は「住まいの設計2020年12月号」取材時のものです
●お知らせ
田中さんが住宅雑誌『住まいの設計』で2018年から連載している「家好き芸人 アンガールズ・田中が行く!建築家の自邸探訪」が、1冊の本になりました。これまで田中さんが訪ねた個性豊かな20軒のお宅を掲載。加えて、田中さんの素顔に迫る新規記事も充実しています。