家好き芸人・アンガールズ田中卓志さんが、個性豊かな住まいを突撃取材!田中さんは広島大学工学部第四類建築学部卒業。大学では建築の構造を研究し、得意分野は日本建築だそう。今回訪れたのは、建築家・黒澤彰夫さんのアトリエ兼自邸。黒澤さんの祖父が家を建て、叔父が建て替えをして、代々住み継がれていた思い出深い土地です。叔父が40年前に立て替えた古家を、懐かしい面影を残しつつ黒澤さんがリノベーション。新旧が心地よく調和する空間で暮らしています。
すべての画像を見る(全13枚)手づくりデッキは室内にも広がりをプラス
1階は仕事の打ち合わせスペースも兼ねるLDKで、南側には庭があります。以前は物置があるだけで殺風景だったという庭ですが、最近DIYでデッキを新設。
枕木を敷き、紅葉やヤマボウシ、オリーブなどを植えて緑を楽しめるようにしました。窓のすだれも、デッキや庭の雰囲気にマッチ。
デッキをつくったことによって室内と庭とのつながりが生まれ、LDKにも広がりを感じられるようになりました。
「枕木も自分で敷いたんですか!? 自分でデッキをつくるなんてすごいな~。こういう場所があると癒やされますよね。」と田中さんは感心しきり。
【この住まいのデータ】
▼家族構成
本人41歳
▼住宅の面積やコスト
延床面積/60.99m²(1階29.19m² 、2階32.39m²)
リビングの建具や階段にレトロ感を残して
リビングと玄関を仕切る引き戸はなんともいえないレトロな雰囲気が。この建具は、たまたま解体中だった古民家から黒澤さんがもらってきたもの。上部のガラスを和紙に替えて、プライバシーを確保しています。
「本当にタダで? 相手は知らない人?」と驚きながら、「これ、めっちゃいい」とじっくり眺める田中さん。
さらに、「こういう雰囲気のある建具を買おうと思ったら、結構な値段するじゃないですか。街を歩いていて解体現場を見つけたら、ちょっと勇気を出して声をかけてみるのもありかも」と楽しそう。
そして引き戸を開けてすぐのところにあるベンチに座った田中さんは、「ここから外を眺めるのもいいですね」と外を眺めながらほっこり。
その向かいにある階段は、本当は踏板を替えたかったそうですが、予算の都合で既存のままに。
「経年変化でないと、この味は出ないな。全体的に古いと重く感じるけど、まわりを新しくしたことで、この階段がより生きていると思います」(田中さん)
階段下を活用したスペースにも興味津々。田中さんがいる場所には普段は冷蔵庫が置かれていますが、キャスター付きなので簡単に移動が可能です。収納の扉には、持ち上げて手前に引くと外せる「倹飩(けんどん)」を採用。
「中は広くて、相当モノが入りますね」と田中さん。
キッチンもつくり込みすぎずにシンプルに仕上げています。コンロはビルドインではなく、リンナイのガステーブルを採用。
「壊れたら自分で取り換えられるし、価格が手頃。業務用なので火力も強いんです」(黒澤さん)
見た目もおしゃれで、田中さんも「ちょっとワイルドでカッコイイな~」と絶賛です。
自然素材たっぷりのアトリエ兼寝室
2階はオープンなアトリエ兼寝室。床は杉の無垢材、壁は漆喰で仕上げました。自然素材の心地よさを感じるこの空間は、将来2室に仕切れるようにとレールを設けています。
寝室側には写真や小物などを飾った棚やベンチを置いて、読書をしたり、仕事の合間にくつろいだりしているのだそう。
ベンチや棚が自作だと聞き、「へ~すごいな。古いロッキングチェアもおしゃれだし、ひとつひとつの家具にこだわりが感じられますね」と田中さん。
田中さんが揺られるロッキングチェアは、イギリスの老舗家具メーカー・アーコールのもの。「体にフィットして落ち着くな~」とお気に入りの様子。
経年したからこそのレトロな雰囲気を残す部分と、新しくきれいに生まれ変わった部分とがうまく融合している黒澤邸。そこに手づくりのデッキや棚、自然素材のぬくもりがプラスされた、懐かしく居心地よい空間が広がっていました。
間取図と配置図
【取材協力】アトリエムスタ設計室「亀さんのようにゆっくりと寄り添い、こつこつと丁寧に」がモットー。和紙、漆喰、無垢材など自然素材を生かした住宅や店舗の設計、リノベーションなどを手掛けています。
撮影/水谷綾子 ヘアメイク/名取 瞳
※情報は「住まいの設計2020年10月号」取材時のものです