閉めてしまうと壁のように見える折り戸でキッチンを丸ごと隠せるようになっていたり、空間がすっきりと見えるよう引き戸を取り入れたり、真似したくなる工夫がいっぱいの開放的な住まい。結婚を機に、当時築40年だったマンションを購入して、建築家である夫が設計を担当。家族構成の変化を柔軟に受け入れる、懐の深さのある家にリノベーションしました。さっそく見せていただきましょう。

ワイドスパンの利点を生かし、間取りを大幅に変更したLDK
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目次:

リビングダイニングの白い壁の正体は?ロケーションのよさを取り込んだプラン建具はすべて引き戸に。閉めると白い壁のようにすっきり入居後の暮らしの変化にも柔軟に対応間取り(リノベーション前後)

リビングダイニングの白い壁の正体は?

明るく開放感のあるLDK

この家は、建築家の本城洋一さんが、妻と子ども、2匹の猫と暮らす自邸。ワイドスパンの長所を生かし、LDKを最大限広く、快適にすることがリノベのポイントになりました。

折り戸で壁付けのキッチンを丸々隠すことができる

白い壁の正体は折り戸で、全開するとキッチンが登場する仕掛けです。キッチンを壁付けにして作業スペ ースを広く取り、なおかつ生活感は隠したいと考え、折り戸で丸々隠せるプランにしました。

ダイニングキッチンでくつろぐ親子

このキッチンにしたいと強く希望したのは、実は夫だったそう。子育て真っ最中の妻は、「普段は開けっ放しのことも多いです(笑)」。

バルコニーに面したリビングダイニング

ナチュラルな雰囲気の家具が並ぶリビングダイニング。ソファはマルニ木工、ダイニングテーブルは無印良品、 椅子はYチェア。

テレビボートとローテーブルは、ナラ材でつくったオリジナルです。高さを揃えてあるので、2つ並べて広く使うこともできます。

【この住まいのデータ】

▼家族構成
夫48歳 妻44歳 長女1歳

▼リノベを選んだ理由
結婚を機に、目黒区に住んでいた夫と江戸川区の実家に住んでいた妻の新居として世田谷区に中古マンションを購入。リノベ前提で物件を探し、建築家の夫が設計を手がけた。

▼住宅の面積やコスト
専有面積/67.63㎡ 築46年(昭和45年築) 工事費/ 1200万円(税・設計料込み)

ロケーションのよさを取り込んだプラン

開放的なダイニング

物件はリノベ前提で探し、個性的な不動産を扱う不動産サイト「R不動産」で見つけて購入。前の住人がリフォームをしていましたが、窓が多いわりに暗い印象で、建物本来のよさが生きていないと感じたそう。間取りを大幅に変更して最も明るく開放感のある位置にLDKをつくりました。

バルコニーでくつろぐ親子

周辺に高い建物が少ないため、視界は大きく開けています。大空の下でくつろぐ気分は格別。LDKに面した奥行きのあるバルコニーは、開放感をつくり出すとともに、周辺環境との緩衝帯となってプライバシーを守る役目を果たしています。デッキは木のチップを使った人工木質素材を夫がDIYで貼りました。

建具はすべて引き戸に。閉めると白い壁のようにすっきり

玄関の先に見える寝室

充実した靴収納を備えた玄関の先に見えるのは寝室。個室の引き戸を開けたままにしておくと、 窓からやわらかい光が入り、そよ風が廊下を吹き抜け、家全体が穏やかな空気に包まれます。

白い壁に同化して壁のように見える扉

寝室の引き戸を閉めたところ。扉が白い壁に同化して壁のように見えます。

白い内装の寝室

寝室はベッドとデスクを置くとほぼいっぱいですが、ベッドの足元側に、折り戸で開閉する奥行きのあるクロゼットを造作しました。

廊下の突き当たりの扉に貼り付けたフロストミラーでほんのり明るい廊下に

廊下の突き当たりにある納戸の扉には、タペストリー加工のフロストミラーを貼り付けました。表層に光をためるので、廊下の奥がほんのり明るく光り、圧迫感を軽減してくれます。

清潔感のある洗面台

洗面室の壁は涼しげな色のガラスタイル貼り。ミラーキャビネットを取り付けました。

シンプルな内装のトイレ

トイレは白でまとめたシンプルなつくり。室内の建具はすべて引き戸で、トイレも例外ではなく、建具枠も引き手もなく、一見、ただの白い板に見えます。

入居後の暮らしの変化にも柔軟に対応

書斎には無印良品の収納棚を設置

寝室の隣にある夫の仕事部屋。設計当時、 夫は設計事務所に勤務していましたが、子どもの誕生の翌年に独立し、個室のひとつを仕事場に。壁面には自由にパーツを増やせる無印良品の収納棚を設置しています。

2匹の猫たちのお気に入りの居場所

仕事場の奥まったところにある「小さなおうち」 は、2匹の猫たちのお気に入りの居場所。

夫婦ふたりの暮らしが始まってしばらくして「猫でも飼おうか」ということになり、またしばらくして「1匹だとかわいそうだね」と2匹目が加わったそう。その後長女も誕生し、3人+2匹が暮らす賑やかな住まいに。

ソファとテレビのあるリビング

目の前に高い建物がないので眺望がよく、23区内とは思えないほど開放感がある本城邸。開口部が大きく、バルコニーが広いという物件の長所を生かして間取りを大幅に変更し、明るく開放的な住まいに生まれ変わりました。

間取り(リノベーション前後)

リノベーション前の間取り図

リノベーション前

リノベーション後の間取り図

リノベーション後

設計/本城洋一建築設計事務所
本城洋一さんはニューヨークで建築を学び、帰国後は槇総合計画事務所に10年間勤務。ワールドトレードセンターをはじめとする大プロジェクトに携わる。2016年、「人の暮らしに近い小さなスケールの仕事をしたい」と独立。新築からリノベーションまで幅広く手がける

撮影/山田耕司 ※情報は「リライフプラスvol.26」取材時のものです