理想の住まいを手に入れるためには、暮らしやすい間取りを考えることが大切。そして、それを実現するために、基本的な骨格となる構造や工法を正しく選ぶことも同じく重要です。構造や工法は予算の設定にも大きくかかわります。適切な選択をするためにも、耐震性、耐久性、空間の自由度、施工の早さ…といったそれぞれの特徴と、得意・不得意をチェックしていきましょう。構造については「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート(RC)造」の3つを。工法については「木造軸組工法」「ツーバイフォー工法」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」「プレハブ工法」の5つを説明していきます。
住宅の「構造」とは?どんな種類がある?
「構造」は、躯体部分に使われる材質の分け方で、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート(RC)造の3つがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
木造
すべての画像を見る(全8枚)設計/アトリエ・アースワーク 撮影/松井 進
軽くて強いことが木造の大きな特徴。木材と鉄材を比べた場合、絶対的な強度は鉄材ですが、重量あたりの強度はほぼ等しいものになります。さらに、増改築での加工がしやすいのもメリット。一方で火に弱いという弱点があり、乾燥収縮による変形や腐食、虫食いの恐れも。
鉄骨造
設計/YUUA建築設計事務所 撮影/大槻夏路
鉄筋コンクリートよりも軽量。鉄材としての強度があるため、木造より少ない量の部材で骨組みを構成することができ、大空間がつくりやすいのも特徴です。粘り強く耐震性が高いのも鉄骨のよさですが、火災時の対策として、熱を遮断できる素材で鉄骨を覆う必要があります。
鉄筋コンクリート(RC)造
設計/atelierA5建築設計事務所 撮影/桑田瑞穂
耐震性・耐火性・耐久性が高く、そのうえ堅牢性にも優れます。一方で、鉄筋コンクリートは重量があるので、建物を支えるためのしっかりとした基礎が必要。地盤に杭を打つことになれば、基礎にもコストがかかってきます。解体も容易ではないので、将来的に増改築は困難に。
住宅の基本となる5つの工法をクローズアップ!
一方「工法」は建てる方法を指します。どんなものがあるか、それぞれのメリットや注意点を説明していきます。
1 :木造軸組工法
木の柱、梁、桁、筋交いなどの「軸」で家を支える工法。柱と梁の接合は、木材の先端にホゾ(突起)をつくり、もう一方の木材の穴にかみ合わせるのが基本。建築コストは、使用する木材によっても変わってきます。工期の目安は4 ~ 5か月程度。
<メリット>
比較的制約が少なく、様々な敷地や間取り、デザインに柔軟に対応できます。またメンテナンスしやすく、増改築も比較的簡単。一般に流通している木材、シンプルな構造にすれば、コストを抑えた家づくりも可能です。
<ココに注意>
熟練した職人の技術が必要なので、場合によっては仕上がりにバラツキが出るのがやや難点。業者選びが住宅の質に大きく影響してくるといえます。木の性質上、防湿、防蟻処理を施す必要も。
2:ツーバイフォー工法
2× 4 インチの角材を枠で組み、構造用合板を打ちつけて、床・壁・天井を面で構成。枠組み壁工法とも呼ばれます。地震などの外力を6面で分散して受け止めるため、建物のねじれやゆがみが起きにくいのが特徴。輸入住宅は大半がこの工法になります。
<メリット>
上記の理由で、粘り強く耐震性に優れます。気密・断熱性が高く、省エネ性も期待できる点も。釘を多用して合理的につくるので工期が比較的短く、コストも安く抑えることが可能。請け負った業者による品質の差も少ないといえます。
<ココに注意>
壁の量や面積が建物の強度を左右するので、窓などの開口部が取りにくいのが難点。また、設計の自由度や間取りが制限されるため、大規模な改修には不向き。屋根を最後につける工法なので、雨の影響を受けにくい季節を選ぶといいでしょう。
3:鉄骨造
鉄骨の柱と梁を組み合わせて骨組みをつくる構造。鉄骨材料には、H形鋼、丸型鋼管、角型鋼管など規格化された多様な形があり、強度、施工のしやすさ、デザイン性に合わせて使用します。
また、鉄骨造には「軽量」と「重量」があり、「軽量鉄骨造」は、厚さ6㎜以下の軽量型鋼と呼ばれる鋼材で建物の骨組みを組み上げる工法。加工しやすくコストも安いのが特徴です。一方で、厚さ6㎜超の鉄骨で柱と梁を支えるのが「重量鉄骨造」で、「軽量」よりも耐用年数が長くなります。
<メリット>
設計の自由度も高く、3階建て以上の建物にも対応OK。柱と柱の間隔を大きく取ることができ、大きな空間を実現することも可能。地震時には揺れやすいですが、耐震性と耐久性があります。
<ココに注意>
軽量鉄骨造は柱や梁が振動しやすいので、音が伝わりやすく、交通量の多い道路沿いでは揺れやすいといわれています。鉄骨はさびや腐食に弱いため、結露対策と防錆処理は必須です。
4:鉄筋コンクリート造
現場で鉄筋を配筋して枠を組み、コンクリートを流し込んで組み上げる工法(RC 造)。梁と柱で荷重を受けるラーメン構造と、壁で荷重を受ける壁構造があります。基礎から一体化してつくるので安定感があるのが特徴。
<メリット>
耐火性・耐久性・遮音性に優れる工法。引っ張りに対する力に強い鉄筋と、圧縮に対する力に強いコンクリートの組み合わせにより、高い強度を実現。大空間をつくることも可能です。
<ココに注意>
躯体自体に重量があるため、強い地盤と十分な基礎工事が必要に。工期は6か月以上と長くかかり、ほかの工法よりコストが割高になるのが弱み。増改築はかなり難しいといえます。
5:プレハブ工法
工場で規格生産された壁・床・屋根などの部材を現場で組み立てる工法。構造体の種類により、木質系、鉄骨系、コンクリート系などがあります。ちなみにプレハブは「前もって製造された」という意味。
<メリット>
大部分が工場で生産されるため、現場製作に比べて仕上がりの精度が高く、安定した品質を持ちます。また現場での手間が少なく、そのぶん工期も短くてすむのもメリットです。
<ココに注意>
設計の自由度はやや低めで、変形敷地などには不向き。また現場ではクレーン車を使うことが多いため、接道状況や敷地の形状によっては施工ができない場合もあります。
基本性能を軸に、状況と優先したい内容で選ぶのがコツ
このように、構造も工法もそれぞれによさがあり、弱点もあります。そこで、設計の自由度や頑丈さなどの基本性能を軸に、敷地や地盤の状況、建物の規模、さらにコストなどを考慮したうえで、優先したい内容で構造・工法を選ぶのが基本です。
いくつか例をあげて説明しましょう。
家族構成の変化などでリフォームをする場合
木造軸組工法や重量鉄骨造は、比較的間取りの変更が容易ですが、軽量鉄骨造は耐力壁の移動ができないので制約があります。ツーバイフォーも面で支える工法なので、やはり壁の移動が困難です。
短期間で家を建てることを優先したい場合
工期が最も短いのはプレハブ工法で3~4か月。ツーバイフォーは4か月ほど、木造軸組工法は5か月以上、鉄筋コンクリート造は6か月以上となります。
都市部の狭小地などで防火地域、準防火地域の指定がある
不燃材を使うように定められているため、鉄筋コンクリート、鉄骨造が最適。耐火性のほか遮音性に優れているのもメリットです。
手に入れた敷地に、どんな間取りの家を建てるのか?工期や予算はどのくらいを想定しているか?それによっても選ぶべき構造・工法は異なります。建てたい家のプランをしっかり頭に描いて、最適な選択をしましょう。
●教えてくれた人/米村拓生
一級建築士、インテリアプランナー、住宅性能評価員。東海大学工学部建築学科卒。設計事務所「アトリエT+K」を主宰する