外から見た家の印象は、屋根や外壁によって大きく変わります。自分の好みの印象に近づけるのはもちろんのこと、周囲の雰囲気にも合わせて、屋根や外壁の計画を立てることが重要です。見た目だけでなく、性能にもこだわりを。潮風といった環境の影響、台風のような災害から住まいを守る役割も見逃せません。どんなものを選んだらいいのか? 家づくりの大事な部材となる屋根・外壁について、その種類や特徴を学んでいきましょう。
目次:
気候風土に合い、メンテの手間が少ないものを選ぶ屋根材のおもな種類と特徴屋根のかけ方にもいろいろある外壁材のおもな種類と特徴外壁で家の印象がガラリと変わる室内環境を快適にする「断熱材」にも注目!気候風土に合い、メンテの手間が少ないものを選ぶ
すべての画像を見る(全12枚)※設計/アトリエ・アースワーク 撮影/松井 進
屋根は、直射日光や風雨など、自然環境にさらされるのが前提の場所なので、耐久性と耐候性が必須。そのため、切妻・寄棟・片流れなどの形状も併せ、その土地の気候風土に合ったものを選ぶことが大切です。
例えば、沿岸部であれば塩害を考慮して金属系の屋根は避ける、もし地震の恐れがあるなら重量のある瓦は採用しない、といった具合です。
また外壁は、外観の決め手となる部分だけに素材や仕上げにこだわりたいもの。さらに屋根と同じく自然環境にさらされるため、耐久性・耐候性も押さえておきたいところです。メンテナンスに手間がかからないものを選ぶと、先々の費用の面でも安心といえます。
屋根材のおもな種類と特徴
昔ながらの瓦のほか、金属やスレートなど屋根材の種類もいろいろあります。それぞれの特徴をチェックしていきましょう。
瓦
粘土を焼成したもので、和瓦と洋瓦があります。耐久性は高いものの、重量があるため地震に対しては弱いといわれています。
金属板
ガルバリウム鋼板、アルミニウム板、銅板などがあり、葺き方は、平葺き、瓦棒葺き、縦はぜ葺きなど多彩。加工しやすく耐震性や耐水性に優れますが、さびやすいのが欠点。
スレート板
セメントを繊維質材料で強化した「人工スレート」が一般的。色が豊富で軽量、施工が容易、さらに安価で普及しています。粘板岩などを使った「天然スレート」も。
アスファルトシングル
基材(無機系材料)の両面にアスファルトを塗り、表面に色砂を圧着した素材。軽量で柔軟性、耐震性、防水性に優れます。可燃性のため、防火指定のある地域では使用できません。
屋根のかけ方にもいろいろある
単純な三角屋根からアール型や平らなものまで。屋根の形のバリエーションを紹介します。
切妻屋根
最も多い形。和風・洋風どちらの住宅にも合い、単純な形状なので雨じまいも良好。
寄棟屋根
建物全体に軒が回るため、外壁の保護に有利。台風などの風圧にも強いのが特徴です。
片流れ屋根
簡素な形状で低コスト。ほかに比べて壁面の面積が多く、風雨に若干弱いのがデメリット。
陸(ろく)屋根
屋上設置に伴う屋根形状。雨水対策用にごく緩い勾配と防水施工が必要に。
方形(ほうぎょう)屋根
寄棟屋根のバリエーション。建物が正方形のプランに用いられます。
ヴォールト屋根
アールを描く屋根。モダンな形状ですが施工の難度が高く、工事費もかかります。
外壁材のおもな種類と特徴
外壁の施工には、大きく分けて「湿式」と「乾式」の2つがあります。湿式は、施工現場で塗り壁材を水と混ぜて練り、刷毛やコテなどで塗っていく工法。乾式は、あらかじめ工場で生産された建材を取り付けていく工法です。
湿式工法
モルタル
セメントと砂と水を混ぜ合わせたもの。ペースト状で加工しやすい半面、ひび割れが生じやすいため、伸縮性・耐水性のある塗料をしっかり塗って仕上げます。
リシン
アクリル系、シリコン系、防水性を高めた弾性リシンなどがあります。モルタル下地の上に用い、かき落とし、あるいは吹き付けて仕上げます。
スタッコ
セメント、砂、顔料などを調合した仕上げ材。モルタルなどの下地の上に厚く吹き付け、石造りのような重厚感を表現できます。
天然無機質系左官材
石灰や大理石粉を主成分とした西洋漆喰のこと。ローラーやコテで仕上げられ、質感の微妙な表現が特徴。
湿式・乾式工法
コンクリート打ち放し
コンクリートの表面をそのまま仕上げとしたもの。コンクリートは水に弱いため、表面保護材を施す方法も。
タイル・石・レンガ
耐火・耐水・耐候性を持ち、重厚感や高級感のある表情をつくり出すことができます。不燃材料なので防火地域におすすめ。
乾式工法
サイディングボード
セメント系と、ガルバリウム鋼板などの金属系があります。工場生産で、現場で下地に釘止めして仕上げます。不燃性、耐水性に優れ、軽量で施工も容易。
ALC板
セメント、珪石石灰、水、発泡剤を混ぜて形成し、蒸気処理した軽量気泡コンクリートのパネル。断熱性、耐火性、吸音性に優れる。重量鉄骨造、軽量鉄骨造の住宅に使用。
板張り
檜、ヒバ、杉などの耐候性、耐水性に優れた木材がおすすめ。防火地域の場合は使用不可。
外壁で家の印象がガラリと変わる
どんな外壁を採用するかで、住まいの印象は大きく変わります。実際の実例をいくつか見ていきましょう。
天然無機質系左官材で、独特の風合いを表現(設計/森 清敏+川村奈津子)。
モルタル金ゴテ仕上げ。ムラのない仕上がりが壁面に映える(設計/石川 淳)。
町並みに温かみを添えるベイ杉板張り(設計/石川友博+成山奈々絵)。
屋根・外壁ともにガルバリウム鋼板。インパクトがあり耐候性も抜群。(設計/仲條 雪+横関和也)
ウロコ状に張ったガルバリウム鋼板が個性的(設計/宮原輝夫)。
室内環境を快適にする「断熱材」にも注目!
屋根や外壁で自然環境から住まいを守るのに加えて、室内の寒さ暑さ、さらに省エネ効果を左右するのが断熱性能です。その決め手となるのが壁・天井・床などに用いる断熱材。外気に触れる部分に施すのが基本です。その材質には以下のような種類があります。特徴と併せて見てみましょう。
- グラスウールやロックウールなどの繊維系:最も一般的で施工しやすく低コスト
- フォーム状の発泡系:耐久性に優れるのが利点
- 羊毛やセルロースファイバーなどの自然系:調湿性に優れて結露が発生しにくく廃棄も容易
見た目の美しさはもちろん、外の暑さ寒さや騒音をシャットアウトして、室内環境を快適に保つ屋根&外壁。コストやメンテナンスのことも考えて最適なものを選べば、住んでからの満足度が大きく上がります。
●教えてくれた人/米村拓生
一級建築士、インテリアプランナー、住宅性能評価員。東海大学工学部建築学科卒。設計事務所「アトリエT+K」を主宰する